読書の効果5:共通の知識背景と言語の生成

これは、自分一人で読書をする場合ではなく、数人で共通の本を読む場合のメリットだと思います。会社の中で、数人以上のメンバーを持つリーダーや、夫婦・彼氏彼女の間においても有効だと思います。更に社外の横のつながりで繋がった人たちにも有効だと思います。どんなメリットかと言うと、共通言語の生成です。共通言語、共通の背景知識、共通のビジョン等を読書によって作り出すことができます。

例え、長年付き合っている彼氏彼女であっても、理解しあえないことは多々あると思います。「あれ?何でそうなるのかな?」ということは多々あります(笑)。これが二人とも経験したことのないことになると尚更です。

例えば、二人が結婚して子供を授かり、そのように子育てをしていくか?ということを話し合うとします。そうすると、過去の体験や知識を元に、「こうしたらいいんじゃないか?」ということを話し合い始めます。お互いが積み重ねてきた経験が異なりますから、当然のように意見は食い違います。多少の意見の食い違いはいいかもしれませんが、我慢して不平・不満が蓄積していくと、後々大爆発ということにもなりかねません。

こうしたことは、会社内のプロジェクトでも頻繁に起きます。人それぞれ立場が異なり、知識が異なるからです。持っている情報が異なった場合、結論は当然異なります。そうすると意見の不一致は必ず起きます。そうした時に、「権限」によって意見を統一したとしても、なかなか上手くいきません。

そして、こうした問題は社外の横の繋がりで始まったプロジェクトの方が深刻かもしれません。なぜなら、会社は「我慢」してプロジェクトを進める責務がありますが、横のつながりのプロジェクトであればより簡単に「脱退」できるからです。会社の仕事は給料をもらい、生活のために行っていますから、不平・不満があっても何だかんだ投げ出したりしません。一方で、利害関係もなく、生活がかかっていないプロジェクトは簡単に辞めていきます。(本当に。)

そうした時に、共通の本を読んでおくことは非常に大きな力を発揮します。特に重要な概念・キーワードに関する本は、必読書としてグループメンバー全員が読むといいと思います。そうすれば、「仕事において重要なことは、スマートクリエイティブ、ハイコンセプト、リーダーシップの3つ。」などと共通の知識背景を持つことができます。それは、すなわち共通言語を生成することになります。もっと言えば、組織のDNAを生成すると言っても過言ではありません。

そうして共通の知識背景を持つことができれば、「リーダーシップ」という言葉を聞いて、理解することが同じになるのです。そうすると、議論の中でリーダーシップという言葉が出てきても、全員が共通の土俵の上で話を進められます。

ただ、誤解していただきたくないのですが、私は何も、全員同じ意見を持つべきとは言っていません。知識背景と理解を揃えた方がいいと言っているだけです。

例えば、上で挙げたリーダーシップについて全員が共通の理解をしていれば、「全員がリーダーシップを持つと、組織が上手くいかなくなるんじゃないか?」などというピント外れな(不毛な)ことを議論しなくて済むようになるということです。(リーダーシップとい概念については、伊賀康代氏の「採用基準」に詳しく出てきます。)そうではなくて、「私は、こうしたリーダーシップを発揮できるようになりたい。」や、「あなたには、こうしたリーダーシップが足りていない。」というような生産的な議論ができます。

そのため、不毛な意見の不一致ではなく、生産的な意見の違いを生むことになります。生産的な意見の違いであれば、組織は崩壊ではなく、イノベーションに向かいます。

根幹にかかわるような重要な概念について、10冊から20冊以上の本を共通で読んでいる組織は、とても強固になると思います。大事な概念を教えるための教育コストもかからないですし、不毛な議論にエネルギーを費やすこともありません。共通の本を読んで、全員のメンバーが理解を揃えていれば、その日から生産的な議論に時間とエネルギーを注ぐことができるからです。私自身にも、そうしたDNAとも言えるような本が10冊以上あります。

もし、その組織にとってのDNAともいえる本を読んで、全く共感できない人は、残念ながら、その組織に所属するべきではないと思います。我慢したり、無理に納得しようとしても、小さな歪みが大きくなって、取り繕えなくなります。それは本人にとってもよくないことですし、周囲のメンバーにも悪影響です。入社試験のない横のつながりの場合は、本質となる本を人選のために使ってもいいと思います。

このように、読書には共通の知識背景と言語の生成、つまり組織のDNAを作るという効果もあると思います。

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