「続・下流老人」目を背けてはいけない悲惨な未来

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続・下流老人

下流老人って知ってますか?

高齢者の20%以上が貧困に苦しんでいます。いまの20代は、さらに高い確率で貧困になります。なぜなら、日本は人口増加を前提に社会設計がされているからです。続・下流老人でわかった目を背けてはいけない悲惨な未来を紹介します。

続・下流老人

初版:2016年12月30日

出版社:朝日新潮

著者:藤田孝典

下流老人の現実

下流老人を知っていますか?

下流老人とは、生活保護以下の貧困に苦しむ高齢者のことです。下流老人という言葉を初めて知る人もいると思いますが、日本の高齢者の20%以上が下流老人だと言われています。そして、下流老人には、こんな特徴があります。

下流老人の最大の特徴は、3ない状態にあることだ。3ないとは、すなわち、「収入が少ない」「貯蓄がない」「頼れる人がいない」の3つである。
これらが欠落している高齢者は、自力では貧困状態からの脱却が望めない。そればかりか、生活保護制度などの社会的セーフティネットからもこぼれ落ちてしまっている。そのため病気や事故、家族問題や介護トラブル、さらには犯罪といった様々なリスク因子に生命を脅かされながら、日々生活をしているのが実態である。

下流老人は、収入が少ない・貯蓄がない・頼れる人がいない。そして、いまの貧困状態からの脱却が望めないのです。なんという苦しみでしょうか。

自分が若ければ、5年後・10年後の未来に希望を持つことができます。自己研鑽をしたり、なんらかのチャンスをつかんだりということを考えられます。しかし、高齢者となり、年々体力も知力も衰えて、わずかな蓄えも減っていく生活では、未来に希望を持つことは難しいでしょう。

そして、さらに下流老人の実態を知っていただくために、本書で紹介されていた3つの事例を紹介します。

  • 利根川で一家心中
  • 優秀なビジネスマンがコンビニ店員に
  • 老人ホームで働く70歳

利根川で一家心中

2015年11月に埼玉県深谷市で、47歳の娘が両親を乗せたまま車ごと利根川に突っ込み、一家心中を図った事件がありました。この事件の背景をご存知でしょうか?

この悲惨な事件の裏側にも下流老人の存在がありました。

娘は、精神的な疾患を患って会社を退職し、両親の元に戻っていた。一方で、80代の母親は認知症を発症しており、その介護費用をまかなうために70代の父親が新聞配達をして生活費を稼いでいた。ところが頼みの綱であった父親も病気を患い歩くことさえ難しくなってしまう。娘は自身の治療を続けながら病気の両親を介護していたが、次第に絶望感を深め、とうとう一家心中を決意した。これがその事件の真相である。

なんということでしょう。順風満帆に人生を送っていても、40歳を超えた娘が心を病んで家に戻ってきて、それを70歳を超えた父親が新聞配達で支えてきていたのです。その時点で、かなりの苦しみだっただろうと想像します。

その上で、病気で働けなくなり、収入が途絶えることになるとは…。娘を立派に育て上げても、人生は「あがり」ではないということです。そこから先にも、試練は待っているですね。いたたまれない事件です。

優秀なビジネスマンがコンビニ店員に

下流老人と聞くと、どこかで自業自得でしょ?という感覚を持つ人もいるのではないでしょうか。

もちろん、中にはめちゃくちゃな生活をしてきた人もいるでしょう。しかし、本当に普通に会社で勤め上げてきて、突如として生活が崩れていく人もいるのです。

この事例の方は、会社の大規模な人員整理に巻き込まれた人です。変化の激しい時代なので、数万人単位のリストラも珍しくなくなりました。しかし、リストラで怖いのは、賃金の高い管理職から重点的に行われるものの、そうした人は年齢が高く転職が難しいということです。

田坂さんは、キャリアも能力も十分にある優秀なビジネスマンだった。しかし再雇用先は容易にはみつからず、多くの会社はエントリーすら受け付けてくれなかったという。理由は単純で、年齢が高すぎたのだ。
条件は前と同じか、少し低くても仕方がないと考えていました。でも甘かったですね。条件うんぬん以前に、正社員として雇ってもらえない。パートやアルバイト、派遣社員といった形でしか就職口が見つからないんです。確かに50過ぎたおじさんを雇うよりも若者を雇った方が使いやすいし、未来もありますからね。考えてみれば、自分も課長をやっていたとき、若手を課内に配属するように求めていましたから」

50歳を過ぎて、あと10年弱で定年退職だと思っていた矢先のリストラです。いままで30年にわたって積み上げてきたキャリアが消えてなくなったのです。そして、生活費のための仕事に就きますが、体を壊したり、事情があったりして、最後に行き着いたのがコンビニ店員です。

そして最後に行き着いたのが、コンビニエンスストアのアルバイト店員だった。現在も、大学生や高校生、パートの主婦やベトナム留学生らと一緒に、週に5日〜6日働いている。レジ打ちや品出しなどの仕事をして、時給は900円だそうだ。月給にして17万〜19万円程度。それが家族守るための、田坂さんの最後の拠り所である。
生活は苦しいですよ。なによりどれだけ働いても今後楽になる見込みがない、むしろ苦しくなる一方というのが、本当に辛いです。希望が持てないんです。いまはまだ退職金の残りや貯金があるからなんとかやっていきますが、それもあと数年持つかどうか…」
退職時、退職金と合わせて2000万円以上あった貯蓄は、子どもたちの学費や住宅ローンの支払いで、あと数百万円しか残されていないという。もしもローンが支払えなくなれば、家を手放すことも考えねばならない。完済まで残り4年、それまで田坂さんの体力がもつかどうか、保証はどこにもない。

2000万の貯金が数百万に減るのは、相当な恐怖感です。子どもの学費や住宅ローンの支払いに耐えられたとしても、まだ30年以上は人生が残っています。その間、ほぼ貯金のない状態で、綱渡りの人生を歩いていくことになるのです。

50代半ばからコンビニ店員になってますから、60代70代でキャリアアップもないでしょう。そうすると、もう収入が上がる見込みもなく、未来は非常に苦しいと想像できます。

老人ホームで働く70歳

老人ホームに入っているのではなく、老人ホームで働いている70歳がいるのです。

例えば、夫の死後、月額9万円の遺族厚生年金を受給しながら、それだけでは生活していけず、現在も特別養護老人ホームでヘルパーとして働いてる70歳の女性がいらっしゃった。頼れる身内もいないため、働けるうちは働きたいと明るく話していたが、「80歳を過ぎても同じ生活が続けられるのか、それを考えると不安です」と漏らしていたのが印象的だった。
ほかにも、貧困ラインぎりぎりの生活を送りながら「仕事があるから、なんとか生活できている」「今は健康で介護も医療も必要ないから、なんとか大丈夫」と話す高齢者は、後を絶たない。
だが、健康を損ない、働けなくなったとき、彼らはどうなるのだろうか。彼らだけではない。誰もが”働けなくなるとき”は必ずやってくる。

なぜ、下流老人が生まれたのか?

下流老人が生まれた理由は2つあります。1つは長寿化です。もう1つは人口構成の変化です。この2つが要因で、老後のお金が不足しているのです。

長寿化したことで、「老後」の時間が長くなりました。そのため、退職金や貯金だけでは老後の生活費を賄いきれなくなったのです。そして、60年代や70年代の日本と違い、少子高齢化が進んでいます。そのため、高齢者に支給される年金も減額され、医療負担額も増えています。

こうした理由で、高齢者の貧困が増えているのです。そして、残念なことに長寿化も少子高齢化も改善の余地がありません。いま84歳の平均寿命は100歳を超えるまで上昇し続けると推定されています。また高齢者の割合も、まだまだこれから上昇していきます。

そのため、いまの高齢者の貧困よりも、いまの20代が高齢者になったときの貧困問題のほうが悲惨です。下流老人の割合は、現在のように20%などという数字では、とても収まりません。

そして、いまの20代は自分が高齢者になる前に、親の貧困という課題に向き合う必要があります。まだ親が50代・60代という人が多いので、問題は顕在化していないでしょう。しかし、親が70代に入ってくると、いまの高齢者以上の割合で下流老人が生まれます。あと10年以内に起きることです。

ちなみに、前提的なことですが、いまの年金と介護費用の実態を少し紹介します。みなさんは、いまの高齢者が、どれくらい年金を受給しているかご存知ですか?

では実際に高齢者は、どれほどの年金を受給できているのだろうか。
2013年度末時点で高齢者が受け取っている老齢年金の月額分布をみると、最も人数が多いのは「6万〜7万」の間で約460万人となっている。この額は、ちょうど国民年金の満額受給の金額と一致する。
これをピークに「5万〜6万」が約330万人、「7万〜8万」が320万人となっていて、全体の6〜7割の高齢者が月額10万円未満の年金しか受給できていないことがわかる。

もっとも多くのは6〜7万の受給額です。ただし、これは現在の数字です。親世代は、もちろんこれよりも下がります。いまの20代がもらえる年金は、月額1〜2万くらいになるのではないでしょうか。試算額はインターネットで調べれば出てますので、気になる方は検索してみてください。

そして、続いて介護です。こちらは年金以上に馴染みのない人も多いでしょう。ところが、年金以上に衝撃的です。

実際のところ、有料老人ホームで暮らすには、どれほどのお金が必要になるのだろう。…集計の結果では、東京都内の介護付き有料老人ホームを利用する場合、ひと月あたり約37万円の支払いが生じる。さらに施設利用料の内訳は、住居費、管理費、食費、水道光熱費などで、介護サービスを利用した場合の自己負担額やオムツ代などの日用品費は含まれていない。これら諸々の経費を加味したうえで、仮に70歳から85歳までの16年間を有料老人ホームで過ごす場合、実に7000万〜8000万円近いお金がないと住み続けられないことになる。

ひと月平均37万!?

平均的な介護期間は10年と言われています。そのため、一人5000万はかかってもおかしくないのです。夫婦で1億円というとんでもない金額になります。こんな金額払えるのでしょうか?

もちろん、払えない人が大半です。払えないので、家族で介護をする必要があり、いままでと同じ仕事を継続できなくなる人がいるのです。「介護離職」と呼ばれるものです。

これも20代で、この言葉を知っている人は少ないでしょう。20代の関心ごとでいえば、子育てと仕事の両立だと思います。しかし、40代・50代になると介護と仕事の両立が、課題となるのです。

こうした年金の減額や介護のことがあるので、死ぬまで働くことが普通な社会が到来します。「老後」という概念が消えていくのです。

2015年10月、政府は、「一億総活躍社会」の実現を宣言した。この言葉は単なるスローガンに止まらない。詳しくは本編で述べるが、ほとんどの高齢者は社会を支える主要な労働力として、何よりも自分が”下流化”しないために、現役時代と地続きの労働に身を投じなければならなくなる。
もはや”余生”が消滅したのではないか。
これから私たちが迎えるのは、「死ぬまで働き続けなければ生きられない社会」かもしれない。

そして、念のためですが、高齢者になって就ける仕事というのは、20代が就いている仕事とは異なります。なぜなら、みんなが望む仕事は若者が行うからです。成長が見込める若者と、見込めない高齢者が同じ仕事を希望したら、若者が選ばれるのは当然の流れでしょう。そのため、残念ながら、若者が望まない仕事を高齢者が行うようになります。

すでにその予兆は至るところに現れ始めている。あなたの周りで働く人々に、少し目を向けてみてほしい。コンビニの店員、居酒屋の厨房、ファミレスの接客係、マンションの管理人、新聞配達員、タクシー運転手、配送業者、介護ヘルパー…。これまでは高校生や大学生など、若者が中心になってアルバイトに従事する高齢者を見かける機会も増えている。そして考えてみてほしい。なぜ彼らが、若者に混じって高齢期になっても働かなければならないのかを。

著者は、国が、この貧困問題を解決すべきだと主張しています。たしかに、数百万人の貧困問題を解決できるのは国でしょう。しかし、一人一人の個人は、国の政策を待ってはいられません。10年後・5年後に、こうした問題が迫ってきているかもしれないのですから。なので、個人でできる対策は、いまから準備していくのがいいと思います。

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