「誰がアパレルを殺すのか」思考停止の業界にこそ、チャンスがあった!

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誰がアパレルを殺すのか

ファストファッションが安い労働力を酷使して、アパレル業界を破壊している

そう考えていませんか?実態は違います。業界ごと思考停止に陥っていることが、アパレル不況の原因です。その原因について紹介します。


誰がアパレルを殺すのか

初版:2017年05月29日

出版社:日経BP

著者:杉原淳一

思考停止のアパレル業界

アパレル業界が苦戦しているのは、なぜか?

それは、ファストファッションが中国の安い労働力を酷使して、安価な服を大量に売っているから。

こうした主張を、よく耳にすると思います。わたし自身も本書を読むまで、そうした側面があると考えていました。ところが、アパレル業界が不振に苦しんでいるのは、ファストファッションが原因ではありません。一言で言えば、「思考停止」が原因です。

本書では、その思考停止の結果として2つの事象を取り上げています。

  • ものづくり力の低下
  • 大量生産・大量廃棄

どういうことか、1つずつ解説していきます。

ものづくり力の低下

1990年代にユニクロが急成長を遂げ、日本のアパレル業を変えました。ユニクロはSPAを採用し、中国に多くの工場を持ち、安価で高品質な服を次々に市場に投入していったのです。

そして、ユニクロの成功の秘訣は、工場を中国に持っていることだと考えた日本のアパレル業界は、結果的にものづくり力を失っていきます。

ユニクロや欧米ファストファッションは、アパレル産業の川上から川下までの情報を正確に把握し、サプライチェーン全体を合理的に管理している。消費の変化に応じていち早く工場や売り場に指示を出すのが大きな強みだ。中国での大量生産や積極的な出店攻勢で注目を集めていたが、強さの本質はサプライチェーンの全てを把握している点にある。だが、それに気付かなかった既存の大手アパレル企業は、製造拠点を中国に移すだけで、ユニクロや欧米ファストファッションと同じように人件費を安く抑えられ、大量生産によるスケールメリットによって製造コストを下げられると考えた。そして安易に中国生産に舵を切った。つまり表面的に「ユニクロのようなビジネス」をまねしようとしたのだ。
1990年代を起点として、アパレル業界に「商品単価の大幅な下落」という大きな変化が起きた。1991年を100とした場合の購入単価指数は、2014年には60程度まで落ち込んでいる。

そして、こう続きます。

不振を受けた場当たり的な対策は、商品の技術力や企画力の低下も招いた。安く大量に生産できるからという理由で、優れた技術を持つ国内の産地や工場を置き去りにし、中国への工場移転を進め、高い技術力のある国内の縫製職人は仕事を失った。
本来なら「こんな商品を作ってほしい」と具体的に指示を出す相手だったはずの商社やOEMメーカーに「なんでもいいから、売れ筋商品を作ってきてくれ」と頼み続けるうちに、自ら売れ筋を生み出す力を失っていった。
百貨店や売り場を拡大し続けるショッピングセンターに付き合って作った無数のブランドは、「呼び名としての意味しかないの」になってしまった。
「買いたい服がない」ー。
結局、消費者はこう思うようになった。百貨店やショッピングセンターに並ぶのは、似たようなデザインの服ばかり。しかも長いデフレを経験した後、「おしゃれ」「かわいい」といったブランドイメージだけでは財布のひは緩まない。消費者が洋服を買いたいと思わなくなったのは、商品を提供するアパレル業界の自業自得と言っていい。

たしかに、日本のアパレルブランドは違いのわからないものがたくさんあります。ジャーナルスタンダードもユナイテッドアローズも、シップスもアーバンリサーチも多数のブランドを持っています。でも、ブランドごとの違いはわからないです。多くの人は、ざっくり、このブランドはジャーナルスタンダードのひとつなんだなと思って買い物をしているのではないでしょうか。

また、ジャーナルスタンダード、ユナイテッドアローズ、シップス、アーバンリサーチで好きなブランドは?と聞かれても、わたしは答えられません。なぜなら、基本的に似ているからです。どのブランドにも似たような価格帯を持っており、似たような服が並んでいます。これも、ものづくり力の低下を表している一例でしょう。

そして、成功事例の本質ではなく、表面部分を真似るという行為は、いまも繰り返されています。

たとえば、ZOZOがネット通販で大成功を遂げています。アパレルでは一人勝ちの状態です。それを見て、アパレル各社は、こぞってネット通販を始めていますし、新規事業の目玉と位置付けています。

でも、ZOZO以外で服を買ってる人っているのでしょうか?楽天で服を買うという話は聞きますが、ZOZOも楽天もモールです。ひとつのアパレルブランドがネット通販をしても、よっぽど熱狂的なファンを抱えていない限り、売れ行きは芳しくならないだろうと思います。

もちろん、これはアパレル業界だけの現象ではありません。わたしのいる業界でも、SNSで華々しく成功した事例が話題になると、一気にSNSが流行ります。でも、本書を読んで表面的な真似で終わってはダメなんだと理解しました。最初は真似に止まるかもしれませんが、実践するうちに本質を理解し、本物になっていく必要があります。

大量生産・大量廃棄

つぎに、大量生産・大量廃棄です。これも、ものづくり力の低下と関連した事象です。

アパレル業界は、売れるものを作るというより、数打てば当たる方式でものづくりをしているそうです。その結果、大量の服が廃棄されていきます。ユニクロの柳井氏が、そのことを痛切に批判しています。

作った商品が見込みほど売れず、不良在庫が発生してセールに回るのはほかの業界でも珍しくはない。ただ、アパレル業界がほかと違うのは、大量の売れ残りを前提に価格を設定し、ムダな商品を作りすぎているという点だ。消費者のニーズを真剣に考えず、数を撃てば当たるとばかりに大量の商品を作る様子は、「散弾銃を色々な方向にふり回しながら打っているようだ」(ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長)。

その結果、市場規模が縮小し続けているのに、生産されるアパレル点数は増え続けるという異常事態が続いています。

報告書によると、国内アパレルの市場規模は1991年に約15.3兆円あったが、2013年には10.5兆円に縮小した。ここ数年は訪日外国人による”爆買い”特需が底上げしていると見られ、これを除けばすでに10兆円割れしている可能性がある。
一方、供給されるアパレルの総量は1991年時点で約20億点だったが、2014年には約39億点に増えている。つまり、市場規模が3分の2に落ちているのに、市場に出回る商品の数は倍増しているということだ。

この20年間(ユニクロが世に出てから)、アパレル市場は2/3になっています。にも関わらず、アパレル総量は2倍に増えているのです。

そして、大量廃棄があると、もちろん、その在庫ロス分が価格に上乗せされることになります。服の値段は中国に工場を移すことで安価になっていますが、それでも在庫ロス分が乗っているので、品質と値段に妥当性を感じる商品は少ないのではないでしょうか。

この品質の商品が、この値段で買えるの?と驚かされるブランドは少ないです。そういう意味でも、ユニクロが群を抜いています。このように大量生産・大量廃棄によって、価格の妥当性が失われていることも、アパレル業界不振の要因になっています。

エバーレーン2つの革命

日本のアパレル会社が苦戦する中、アメリカですごいアパレル会社が出てきました。本書で紹介されていた「エバーレーン」です。

  • 流通革命
  • 売上予想

この2つで、日本のアパレル会社が抱える問題を一気に解決しています。アパレル以外の業界にも、とても参考になる事例です。

流通革命

ユニクロは卸や問屋、小売店などの中間業者を廃し、自らの工場で生産して自社の店舗で販売しています。その結果、品質のわりに驚くほど低価格な商品を提供しています。ところが、そのSPAをさらに一歩進めて、エバーレーンは「オンラインSPA」を採用しています。

エバーレーンは「オンライン SPA」と呼ばれる新しい業態だ。店舗や中間業者、大規模な広告宣伝といった、これまでアパレル業界で「あって当然」「やって当たり前」だったことをなくしている。商品は小規模ロットで完全に売り切ることを前提とし、在庫は極力持たない。そのため売れ残った商品の大規模セールをもせずに済む。
マーケティングはSNSを駆使する。卸売りもほとんどせず、ネットを通じて直接、商品を消費者に届ける。

そして、こう続きます。

出店を抑え、広告宣伝をやめて浮いた資金は、商品の素材やデザイン、顧客サポートといった、アパレル業界が最も大事にすべき部分に投下。質の高い商品を、適正な価格で販売する。
ただ安いだけの商品ではなく、納得できる価格の商品を提供するオンラインSPAの姿勢は、ミレニアル世代を中心にファンを増やしている。フェイスブックやインスタグラム、ツイッターなどのSNSを積極的に使い、宣伝しているのも大きな特徴だ。

卸・問屋だけでなく、店舗も全米に2つしか置かず、広告宣伝もしないアパレル会社です。いまの時代だからこそできる流通・販売の仕組みです。ちなみに、エバーレーンのHPを見てみると、以下のような説明があります。これ、なにかわかりますか??

なんとエバーレーンは、価格の内訳を消費者に開示しているのです。製造から販売までの、どの工程でどれだけのコストがかかているかを消費者に見せているのです。ここまでやるとは、本当に驚きです…。その結果、次のような説明も載せています。

これはエバーレーンで15ドルで買える商品を、他のブランドで買うと55ドルになりますよ、ということを説明しています。この2つを見せられたら、もうエバーレーンで購入するしかありませんね笑

ちなみに、ここで大事なことはエバーレーンが安いということではありません。品質に対して、値段に妥当性があるということです。本書にも、こう書かれています。

オンラインSPAが人気を博すのは、安く商品を提供しているからではない。例えば、グレイツの商品であれば、レザーの靴が149ドル、エムエムラフルールであればニットが165ドルと、価格だけ見れば決して安いとは言えない。
不要なコストを省き、その分を商品開発やデザイン、顧客サポートに費やす。それがフェアであり、あるべき姿なのだと消費者に示す。この姿勢が彼らのブランド価値になっている。つまり彼らが示すのは、「安さ」だけではなく「価格の妥当性」の大切さだ。

気になる方は、エバーレーンのサイトを見てみてください。「安い」と感じる値段ではありません。でも、値段に納得できるから、人気なのです。

参考:エバーレーン

売上予想

大量生産・大量廃棄へのひとつの回答です。

日本でもZOZOでは一般的になった取り組みですが、サイト上で新商品の予約販売をして、需要の予想をしています。その結果、作りすぎを防いだり、売り切れの機会損失を防いだりしています。

またオンラインSPAの中には、発売前の商品をSNSや自社サイトで積極的に公開し、需要を予測する企業もある。例えばエバーレーンの場合、自社サイト内に「Coming soon」コーナーを設置。新商品の発売予定日と価格を明示し、「ウェイティングリスト」ボタンをつける。欲しいと思った利用者がクリックすると、「受け付けました。商品が入荷次第お知らせします」と表示され、商品の発売開始と同時にエバーレーンからの通知を受け取ることができる。利用者はウェイティングリストボタンをクリックして発売開始を待ち、エバーレーン側はそのクリック数によって、発売前の商品がどれだけ売れそうか予想する。

アパレルは季節に合わせて商品を入れ替えていきます。そのため、春物を売れる期間は3ヶ月しかありません。そうすると、春物を売り始めて、想定外に売れる商品が出てきても、手の施しようがないのです。工場に追加生産を依頼しても、商品ができあがって店頭に並ぶころには春物が売れる季節は終わりつつあるからです。

なので、事前に売れ行きがわかることは、とても重要です。しかも、エバーレーンはオンラインSPAを採用し、ユーザーは普段からサイトで購入しています。なので、サイトで予約を受け付ければ、他の一般的なアパレルブランドよりも正確に需要予測が可能です。そのため、エバーレーンは在庫ロスと機会損失を防ぎ、売上を上げながら価格の妥当性も高めることができるのです。

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