
どうすれば長く繁栄できるのか?
答えはファンを育てることです。ファンベースでわかった長期的に繁栄する方法を紹介します。
ファンベース
初版:2018年02月06日
出版社:ちくま新書
著者:佐藤 尚之
目次
なぜ、長期的な繁栄は難しいのか?
いま日本のビジネス環境は、より難しくなっています。本書で、その理由が3つ紹介されています。
- 日本社会の変化
- 超成熟市場による変化
- 情報環境の変化
1つずつ、どういうことか解説していきます。
まず、①日本社会の変化により、新規顧客はどんどん減っています。
これは言われるまでもないことですが、少子高齢化により人口が減少していることを指しています。こちらの書評でも紹介したとおり、2020年に日本人女性の2人に1人は50歳を超えてます。
そうすると、今まで売れていた10代向け、20代向けの商品やサービスは売れなくなっていきます。これがすべての世代、ありとあらゆる商品・サービスについて起きるのが日本の社会変化です。
次に、②超成熟市場が新規顧客獲得をより困難にしていきます。
ほとんどの世代でモノが揃っており、多くの商品が高い普及率を示している市場を「成熟市場」と呼ぶが、現在の日本社会は、その状況を大きく超えた「超成熟市場」である。世界を眺めても、これだけ売り場にも家にも仕事場にもモノが溢れかえっている社会はそんなにない。
このように本書でも紹介されており、高度経済成長期にあったような不便や不満が生活の中になくなってきました。そのため、一人一人の価値観に合わせた商品やサービスが求められているのですが、これを生み出すのが難しいです。
最後に、③情報環境の過酷化で、新規顧客へのリーチはより困難になっています。
世の中に流れる情報は膨大に増え、企業が商品情報を伝えたくても伝わらない。世の中を楽しませるエンタメも過剰に増え、苦労していいコンテンツを作ってもほとんど見てくれない。そういう現状の話である。
著者はこのように述べています。そして、マーケティングを生業とする人たちの間でも”ネット広告って実は微妙なんじゃないか?”という空気が流れ始めています。だからと言ってTV CMがいいということではありません。広告自体が全般的に効果的ではなくなってきているということです。なぜなら、著者の指摘どおり、世の中にコンテンツが溢れかえっているので、届けたい人に広告を届けづらくなっているからです。
なぜ、ファンを育てると長期的に繁栄するのか?
既に述べたとおり、日本のビジネス環境はとても難しくなっています。では、長期的に繁栄するにはどうすればいいのでしょうか?
答えは、”ファンを育てること”です。ファンを育てていくことで、事業を長期的に繁栄させることが可能になります。
ちなみに、ファンとは、
もう少し言うと、ファンとは「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」と、この本では定義したい。
…そういう、企業やプランド、商品が大切にしている価値にグッとくる人、その価値にワクワクし喜ぶ人、その価値を支持し友人に薦める人。それが「ファン」である。
つまり、ファンとは自分たちが提供する価値を支持している人のことを言います。
キングコングの西野さんは、別の観点からファンをダイレクトに課金してくれる人と述べていますが、お二人が意味しているものは同じだと思います。
では、なぜファンを育てると、長期的に繁栄が可能なのでしょうか?理由は3つあります。
- ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから
- 時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきたから
- ファンが新たなファンを作ってくれるから
ファンは売上の大半を支え、伸ばしてくれるから
よく言われるとおり、世の中の売上にはパレードの法則が働いています。つまり、20%の顧客が80%の売上をつくっているということです。
もちろん、業界や商材などによってパーセンテージは変動すると思います。しかし、ファン(少数の顧客)が大半の売上をつくっているに変わりはありません。なので、このファンを育てて掴んでいることで、長期的に売上を上げ続けることが可能です。
時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要になってきたから
これはビジネス環境の変化で伝えた2つ目に関連しています。つまり、日本が超成熟市場となっているということです。
そのため、不便や不満の解消のためのモノ消費から、コト消費にシフトしています。その結果、愛着を感じたり、信頼したりしているから、買うという消費行動が増えています。他にも、好きなユーチューバー応援するために買うということもあるでしょう。
成熟社会になり、単なる消費ではなく、それ以上の「なにか」を感じさせてくれる購買行動を求める人が増えています。そのため、ファンに育てることが大切なのです。
ファンが新たなファンを作ってくれるから
ファンは、身近な人に口コミをして、新たなファンをつくってくれます。そして、この口コミは最強の宣伝となります。
なぜなら、友人とは「価値観が近い人」だからである。
価値観が近い友人がツボにはまるコンテンツは自分もツボにはまる可能性が高いし、価値観が近い友人が愛用しているモノは自分も愛用する可能性が高いし、価値観が近い友人が熱中するコトは自分も熱中する可能性が高いからだ。世の中に様々な情報が砂嵐のように吹きすさぶ今、こんなにありがたいものがあるだろうか。
そのため、口コミをしてくれるようなコアなファンを育てることが大切です。一度、ファンができ始めると、その周囲を中心にファンの輪が広がっていくからです。その結果、長期的に繁栄することができるようになります。
ファンを育てる3つの方法とは?
ファンを育てるには、3つの方法があります。
- 共感を強くする
- 愛着を強くする
- 信頼を強くする
どれか1つを実践すればいいということではなく、3つともを実践することが大切です。そして、それぞれの具体的な方法を本書から引用して紹介していきます。
共感を強くする
Aファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
ファンの言葉の中に、企業がまだ気づいていない「共感ポイント」がたくさん隠されている。それをくわしく知ることはファンベースの出発点だ。そこに焦点を当てて改良・改善していくことで「価値」はより高まっていく。
Bファンであることに自信を持ってもらう
ファンは意外と自信がない。なので、他のファンのオーガニックな言葉に触れやすいようにして、自分が支持している「価値」に自信を持ってもらうことが必要だ。それは共感を高め、ファンからのオーガニックなオススメを起こりやすくする。
Cファンを喜ばせる。新規顧客より優先する
新規顧客ではなく、その「価値」を支持しているファンをいの一番に優先するという姿勢を明確に前面に押し出すこと。そしてファンをもてなし、喜ばせること。それはファンの共感を強め、価値への支持も強くする。
愛着を強くする
D商品にストーリーやドラマを纏わせる
単なる「モノ」ではなく、ストーリーやドラマとい「うコト」を纏った商品に我々は愛着を覚える。ならばそれをちゃんと見せよう、ということである。創業ストーリーや商品開発での苦心・苦労などが伝わってこない商品が多すぎる。
Eファンとの日常的な接点を大切にし、改善する
企業やブランド、商品との接点はこの時代とても重要だ。それを改善し、他に代えがたい 体験にしよう。他部署が担当している接点もあるとは思うが、連携し、協力して改善して いくべきだろう。
Fファンが参加できる場を増やし、活気づける
参加し体験すると、他に代えがたいという愛着が強くなる。なのに、商品のファンになっ てくれた人が参加できる場を作っていない企業はとても多い。価値を支持するファンがあ 加できる場を作り、そこを活気づけていくことは重要な施策だ。
信頼を強くする
Gそれは誠実なやり方か、自分に問いかける
真面目にやっているつもりなのに、いつの間にか信頼を裏切っていることは意外とある。 その要素を減らしていくのは大切だ。最近の、特にネット上での広告手法は信頼を裏切っ ている場合もあるので注意が必要である。
H本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
企業の評価・評判は、本業をどのくらいちゃんとやっているかに依っている。「ここの商品は間違いない」という揺るぎない信頼を強めるために、その根拠である研究開発や製造工程、制作工程などをちゃんと可視化しよう。
I社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする
この透明性の時代、社内は社外と言ってもいい。社外の信頼を得たかったら社内の信頼が 必要だ。社内の信頼を得るためには、様々な見直しやインナー(社内)コミュニケーションが必要だろう。
コアファンを育てる3つの方法とは?
コアファンとは、ファンの中でも一段とコアなファンです。周囲に積極的に口コミをして、新たなファンをつくったり、商品やサービスの改善に積極的に関与したりしてくれるような存在です。本書では、ファンを育てることに成功するだけでも、ビジネス的には非常に前進すると書かれています。
でも、その上で、さらなるコアファンを作る方法も書かれていたので、紹介していきます。コアファンをつくる方法は、以下の3つです。
- 熱狂される存在になる
- 無二の存在になる
- 応援される存在になる
こちらも、それぞれの具体的な方法を本書から引用して紹介していきます。
熱狂される存在になる
J大切にしている価値をより前面に出す
コアファンは価値を強く支持している。つまりそれをより前面に出せば出すほど、喜んで くれ熱狂してくれる。ミッションを前面に出すのはもちろん、経営者からの社会的発信や様々な記事への露出などもそれにつながる。
K「身内」として扱い、共に価値を上げていく
傾聴し、自信を持ってもらい、喜んでもらうことにより「共感」が強くなったファンを、「身内」として扱うことでコアファンにしていく。価値観がとても近い彼らと共に、大切にする価値を上げていくことになる。
無二の存在になる
I忘れられない体験や感動を作る
人生の中でもエポックメイキングになるような、忘れられない強い体験や感動を作ると、「その企業・プランド・商品は、その人の人生と共にあるものになる。ただし事前期待を上回る体験や、サプライズが必要だ。
Mコアファンと共創する
商品の企画開発や製造工程、制作過程に、コアファンが参加する。それはその商品をコアファンにとっての「無二」にするだろう。薄いファンを集めた共創はたくさんあるが、人生になくてはならないものにするにはもっと濃い関与が必要だ。
応援される存在になる
N人間をもっと見せる。等身大の発信を増やす
人が応援するのはモノでもコトでもなく、ヒトである。だから「こういう人が働いてい る」ということをちゃんと見せていくことが応援する気持ちを強めることにつながる。社員をもっと見せることだ。有名社員を作ることも重要だ。
Oソーシャルグッドを追求する。ファンの役に立つ
ソーシャルグッドとは世の中のためになる活動だ。企業は生活者の課題解決をしているので本業自体がソーシャルグッドであるが、もっと応援される存在になるためにその幅を広 げよう。また、ファンの役に立つことを現場で地道にやるのもとても大事だ。
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