
部下をエンパワーメントできますか?
エンパワーメントはマネジメントのソフト面で重要な能力です。今回は読書会in東京でわかったエンパワーメントの方法を紹介します。
目次
開催報告:20代読書会in東京
日時:08月29日(水)19:30-22:00
参加者:15名(男性:8名、女性:7名 初参加:4名、リピーター:11名)
MVP賞
なぜ、日本人はマネジメントが苦手なのか
紹介された本
- 読書という荒野
- 家をせおって歩いた
- 1時間で相手を勇気づける方法
- 自分を操る超集中力
- どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた
- 筋トレは最強のソリューションである
- 都合のいい読書術
- USJを劇的に変えたたった1つの考え方
- 自分のアタマで考えよう
エンパワーメントとは、なにか?
エンパワーメントという言葉を聞いたことがありますか?
辞書を調べるとempoerは以下のような説明が書かれています。
to give someone more control over their own life or situation
日本語でいうと、”勇気づける”という言葉が近い感覚だと思います。
このエンパワーメントを仕事の文脈で捉えると、マネジメントの1要素になります。(もちろん、権限委譲という意味もありますが、今回はもう少し深い意味合いで考えます)
ちなみに、マネジメントとは、”(他人の力をまとめながら)現状を目標に近づけること”です。これは「なぜ、日本人はマネジメントが苦手なのか」に書かれている定義です。
そして、マネジメントにはソフト面とハード面があります。
ハード面はわかりやすく、スキルやノウハウ、能力などのマネジメントです。メンバーが効率よく効果的にスキルや能力を向上させ、結果を出せるようにするマネジメントです。そのために数値管理や目標管理などを行なっていくのが一般的だと思います。
一方で、メンバーのモチベーションもマネジメントが必要です。わたしこちらをマネジメントのソフト面を考えています。そして、このソフト面で主に行うのがメンバーへのエンパワーメントなのです。
エンパワーメントで、なにを与えるのか?
マネジメントで考えるとき、エンパワーメント(empowerment)とは人にモチベーションを与えることです。
こういうことを言うと、”モチベーションは人から与えられるものではない”と思う方もいるかもしれません。しかし、モチベーションは人に与えることができますし、人から与えられることもあります。
たとえば、Appleは“Think different”という理念を掲げています。そして、多くのエンジニアがこの理念に共感し、がむしゃらに働いています。また多くのユーザーもAppleの理念に共感して、熱狂的に支持しています。
これも1つのエンパワーメントです。そして、見事に人にモチベーションを与えています。
もちろん、Appleのように何万人、何十万人に影響を与えることは難しいです。しかし、自分がマネジメントしている数人、数十人に対してエンパワーメントができるようになると、世界が変わります。
なぜなら、エンパワーメントができなければ、自分一人の力で目標に向かって進んでいく必要があります。しかし、数人でもエンパワーメントができるようになると、一気にレバレッジがかかります。多馬力で目標に近づいていけるようになるのです。
そして、エンパワーメントで人に与えるモチベーションには3段階あります。
- 1番上がテンションとしてのモチベーション
- 2番目が表に見える自信がつくことでのモチベーション
- 3番目が土台となる自信がつくことでのモチベーション
この3つは1→3にいくにしたがってエンパワーメントは難しくなります。一方で重要性は増します。簡単に、この3つを解説します。
テンション
日々上下のあるやる気です。テンションを上げるのは比較的簡単です。
たとえば、喝を入れたり、檄を飛ばしたりすれば、テンションはあがります。他にも、成功体験を聞かせたり、他の同僚ががんばっている姿を見てもテンションはあがるでしょう。しかし、テンションは上げやすいですが、1日経てば下がってしまう可能性もあります。
表に見える自信
表に見える自信は、パッと見で判断してほとんど間違いのないものです。
経験や実績に応じて培われる自信です。そのため、表に見える自信を上げるためには、成功体験を積ませていくことが大切です。
土台となる自信
土台となる自信は、数ヶ月以上付き合ってみなければ判断が難しいです。
もっとも重要で、モチベーションの根幹となるものです。土台となる自信は幼少期の親との関係がベースになっていることが多く、改善するのも時間がかかります。
一般的に”自信”というと、表に見える自信のほうを指していることが多いですが、この土台となる自信が非常に大切です。この2つの自信はわかりづらいと思いますので、少し補足します。
土台となる自信がなく、表に見える自信もない人
“わたしなんて”とチャレンジすることも拒み、幸せになるのに自分は相応しくないという態度をとります。この人に指摘をしても”そんなこと言われて、わたしは不幸だ”と正面から指摘を受け入れることができません。
土台となる自信がなく、表に見える自信がある人
一見自信満々に見えます。常にマウンティングをしており、自分の優位性を示さなければ気が済まないという態度を取ります。俗にいう”イヤな奴”と思われがちです。この人に指摘をすると”そんな指摘は間違ってる!”と、この人も指摘を受け入れることができません。
土台となる自信があって、表に見える自信がない人
謙虚ながら芯のある人に見えます。失敗のリスクも気にしますが、大切なところでは挑戦する人です。
土台となる自信があって、表に見える自信もある人
見ていると充実感が伝わってきます。土台となる自信があるため、マウンティングも不要で余裕を感じさせる人です。
効果的なエンパワーメントの方法とは?
念のためおさらいですが、エンパワーメントとは人にモチベーションを与えることで、マネジメントのソフト面です。
ここからは具体的に効果的なエンパワーメントの方法を4つ紹介します。その4つが、こちらです。
- 話を聞く
- 努力を認める
- 内面を認める
- 想いを伝える
1つずつどういうことか解説していきます。
話を聞く
話を聞くことの1番のポイントは”相手に関心を向けること”です。
話を聞いている時点ですでに相手に関心を向けているんじゃないか?と思われるかもしれませんが、その通りです。特別なことをしなくても話を聞くだけで、”自分に関心を向けられている”とか”自分は話を聞いてもらえる価値がある”と伝えることができ、人のモチベーションは上がります。
マネジメントでやってしまいがちな間違いは”デキる人を放置してしまうこと”です。放っておいてもデキる人は、自分で勝手に学んで成長していきます。そのため、とくにマネジメントの必要性を感じず、完全に放置してしまうことがあります。
しかし、これはいけません。週に15分や30分でもいいので、話を聞く機会を設けるべきです。そうしないと、1年や2年という時間をかけて、徐々に心が離れていきます。なので、デキのいい人も悪い人も話を聞くようにしましょう。
努力を認める
2つ目の方法は、努力を認めることです。結果を認めるのではなく、努力に注目するようにしてください。
たとえば、営業成績があがったら”すばらしい”と認めることは簡単でしょう。しかし、営業成績の悪い営業マンを部下にもつと”なぜ、こんなに簡単なことができないんだ?”と結果に目を向けてしまいがちです。
訪問件数の向上をベビーステップとして設けたのに、成約という結果がでないと認めることができないというマネジメントもいけません。
メンバーよりも自分の方が能力が高いのはマネージャーとして当たり前です。その人自身が1ヶ月前や3ヶ月前よりも成長したか否かに注目するようにします。たとえ、自分からしたらとても簡単に思えることでも、できるようになれば成長です。そうして、その人の努力を認めるようにしましょう。
内面を認める
内面を認めるというのは、絶対的な肯定です。
つまり、努力をしているか否かに関わらず、その人の存在そのものを認める・肯定するということです。これは本来は親が幼少期に子どもに対して行うことかもしれません。
しかし、この絶対的な肯定感を感じることなく、育った人も多くいます。そういう人たちは、上記の”土台となる自信”が欠けています。
成果がでなくても、うまくいかなくても、ありのままの自分でいていいのだという感覚を自己肯定感といいますが、この自己肯定感が低い状態です。仮に本人が、この自己肯定感の低さに気づいたとしても一人の力で克服するのは困難です。自分のことを絶対的に肯定してくれる存在の助けが必要です。
そして、内面を認めていくと、メンバーがこの自己肯定感の低さを克服していくことができます。
こんなことを書くと、そんなことまでする必要があるのか?と疑問に思われるかもしれません。たしかに、本来は親がやるべきでしょうし、友達や恋人がやることもできるでしょう。しかし、そうした人に恵まれずに今に至る人も実際にいます。
そうした場合、あなたが相手の内面を認め、自己肯定感を高めることができれば、相手はあなたのことを”恩人”と感じるでしょう。時間もかかり、難易度も高く、忍耐を強いられますが、ぜひ人助けと思ってトライしてみてください。
想いを伝える
仕事の関係でなければ、この”想いを伝える”は不要です。たとえば、親や友達、恋人として接していて相手をエンパワーする場合、想いを伝える必要はありません。
話を聞き、努力を認め、内面を認めて接している時点で、十分に深いモチベーションを相手に与えることができるでしょう。
しかし、仕事のマネジメントという意味では、この”想いを伝える”ことは必須です。
なぜなら、マネジメントとは現状を目標に近づけることだからです。つまり、相手を自分が望む方向(目標)に向かって動いてもらう必要があります。
この自分が望む方向に目を向けてもらうには、想いを伝えることが大切です。気恥ずかしさもあると思いますが、これは布教活動で仕事の一環だと認識して時間をとって自分の想いを語るようにしてください。
月に1時間や2時間など時間をかけて一人一人にちゃんと伝わるように繰り返し述べていくことが大切です。”うちのマネージャーは、こういうことがしたいんだよな”とメンバー全員が理解できれば、大きな力となるでしょう。
以上、読書会in東京でわかったエンパワーメントの方法でした。ぜひ、参考にしてください。