「40代、50代になればもっと豊かになるはず。」と漠然と考えていませんか?平均給与が下がり続けている日本で年齢と共に豊かになることが本当にあるのか、実態を直視すべきです。
そこで、平成25年 民間給与実態統計調査(https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2013/pdf/001.pdf)というデータがあるので、中身を見てみましょう。性別年齢別の平均給与を、比較しやすいように以下のような図にしてみました。
まずは、自分が該当する平均値を見てみてください。私であれば、20代後半の男性です。そのため、平均給与は371万ということです。
当然、平均値なので、ここに記載されている数字よりも大幅に年収が高い人もいると思います。ただ、だからと言って、この平均値が関係ないということではありません。
重要なのは、今から10年後・20年後に、どれ位給与が上がるものなのか?ということではないでしょうか?
私の場合、今から30年後には50代後半男性のカテゴリーに入ります。そうすると、平均給与は629万です。現在が371万ですから、30年間で賃金は258万増えるようです。上昇率で言えば、約70%増です。
そう考えると、ちょっと悲しいですね。30年間頑張っても、給与は2倍にもなっていないわけですから。
ただ、会社員時代からこうしたことは、ある程度分かっていました。だから、サラリーマンを辞めたというのもあります(笑)。入社1、2年目から薄々と気づいていました。「あれ?あんに上の役職の人でも1000万いかないんだ‥。」と考えていました。
ただ、上記の図のような数値を明確に突きつけられると、改めて考えさせられます。
女性の場合、20代前半の平均給与226万に対して50代後半になっても平均給与は275万です。実に40年近くかけても、50万ほどしか賃金は上がっていないようです。さらに、自分と同世代の20代後半女性は平均給与295万です。そして、50代後半では、275万です。なんと、女性の場合は30年後には20万も下がってます‥。何が起きたんだ?という感じです。
恐らく、女性には産休・育休などで職場を離れたり、一度寿退社をして正社員でなくなったりと男性よりも給与が上がりにくい事情があるのかと思います。それにしても、悲しい現実です。
30年後経ったら給与が倍にならないどころか、20万も下がっているわけです。そう考えたら、何をモチベーションに仕事に打ち込めばいいのでしょうか?もちろん、お金が全てではないですが、そんなこと言ったってモチベーションを保つのは難しいと思います。
さて、上記の図では現時点での20代から60代の平均給与を現しています。現時点の20代、30代、40代、50代、60代の平均給与を切り取ってみても、十分悲しい現実だと思います。
しかし、よく考えてみてください。今の20代が50代になるのは30年後です。当たり前ですね(笑)。
ただ、30年後ということは、日本の給与全体が右肩上がりで上がっていれば、今の50代よりも30年後の50代の方が給与は高くなります。そうですよね?
逆に日本の給与が右肩下がりで下がっていれば、30年後の50代の給与は、今の50代の給与よりも低くなります。当たり前ですよね?
ということで、日本の平均給与の推移を棒グラフにしてみました。それが、以下の図です。
いかがでしょうか?
見事な右肩下がりですね(笑)。この傾向は一過性のものではありません。今後、ずっと続く傾向です。
ファーストリテイリング社の柳井正氏はこのようにコメントされています。
それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない
柳井正氏が主張しているのは、①グローバル化によって日本の賃金は下がる、といことです。私は、そのグローバル化以外にも日本人の賃金が下がっていく理由があると思います。その理由は、②IT化、③人口動態の変化(少子高齢化、人口減少)の2つです。
③に関しては、[失われた20年は序章に過ぎない]で詳しく書いていますので、興味のある方はご覧になってください。
では、①グローバル化と②IT化について、どういう影響があるのかを簡単に解説したいと思います。
まず、①グローバル化ですが、これは柳井正氏が言っている通りです。日本人と世界中の人(特に途上国の人)が競合する時代が来たということです。これは物流の進化や情報通信の進化が大きな要因だと思います。
SEで考えれば分かりやすいですが、日本人がコーディングをしてもインド人がコーディングをしても完成品の品質が変わらないとします。その場合、インド人は日本人の4分の1以下の賃金で働いてくれます。そして、完成品はインターネットを使って瞬時に現地から送られてきます。そして、リアルタイムでフィードバックをすることも可能です。
そうした時に、わざわざ4倍もの高いお金を払って、日本人に仕事を依頼する必要があるでしょうか?
ありません。インド人と競合するようになれば、日本人も単価を下げて対抗するしかありません。一方、インド人はより高い賃金であっても仕事を請け負えると分かっていますから、単価を上げようとしてきます。そうすると、日本人の賃金は下がり、インド人の賃金は上がっていきます。そして、最終的には日本人とインド人の賃金が拮抗するようになります。
これが、年収100万円代だといことなのです。例えば、月収15万で年間180万(=15万×12ヶ月)という賃金で働くようになるということです。
そして、次に②IT化です。これも基本的には①のグローバル化と同じ原理です。ただ、競合する相手が異なります。グローバル化とは違い、人間が機械と競合することになります。
例えば、税理士・会計士の仕事が数千円から数万円のソフトウェアで代替できるようになっています。もちろん、全ての仕事を代替できるわけでないでしょうが、多くの仕事を代替できるようになっています。これは弁護士であっても同様だと聞きます。
他にも、物流倉庫の仕分け作業を例にとっても同様です。以前は人力でバーコードを読み取り、仕分けをしていました。大きな倉庫であれば、何十人もの人員を用意して仕分けしていたのです。ところが、現在ではほぼ全ての工程を機械が行っています。何十人もの人員は、ミスがなくて24時間365日働き続ける機械と競合することになったのです。その結果、多くの人が年収100万になるどころか、仕事自体を失いました。
このようなことが、特定の分野ではなく、あらゆる分野で起きています。
「私の会社は未だ機械の導入が進んでないから、大丈夫。」ではありません。ソフトフェアも機械も、より性能の高いものが、どんどんと安価で提供できるようになっていくのです。
それは、PCの進化を見ても明らかだと思います。ほんの数年前に10万以上払って買ったPC以上の性能の機種が、現在では3万もしません。高額な金額を払って購入していた会計ソフトも、今では月額1000円のソフトで十分に同じ機能を利用できます。個人の家計簿を管理するソフトであれば、無料ソフトで十分です。お金を払う必要すらなくなりました。
そうすると、「今」機械に代替されていないということは、全く安心材料になりません。ほんの数年で状況が一変することは十分にあり得ることです。
ということで、①グローバル化、②IT化、③人口動態の変化によって、今後も日本の平均給与は下がっていく傾向にあると言われています。
今ですら、30歳年上の平均給与を見て暗くなるわけですから、実際に30年経った時のことを想像すると・・。直視したくない現実ではありますが、よく考える必要があると思います。
20代読書会は、そうしたことを楽しく学び、考える場として開催しています。ぜひ一度足を運んでみてください。
【サイト内のコンテンツの転載を禁止します】