読書会では、共感能力が磨かれます。この共感能力というのは、非常に重要な能力です。特にこれからの時代には共感能力は必須の能力です。この共感能力については、ダニエル・ピンク氏の「ハイコンセプト」の中にも書かれています。「ハイコンセプト」の中では、この共感能力のことをハイタッチと呼び、人の気持ちと共感したり、感情の機微を感じ取ったりする能力と書かれています。
なぜ、この共感能力が大切なのでしょうか?
それは、時代が①グローバル化していることと、②IT化が進んでいることに理由があります。この2つのキーワードは当たり前のように聞く言葉です。「今更、何を言ってるの?」と思われるかもしれませんが、人々の仕事(給与)に多大な影響を与えているのです。
①グローバル化と②IT化が進んでいることで、日本の多くの仕事がなくなります。もしくは、低い対価しか支払われないようになります。なぜなら、多くの仕事が「世界中の人(特に途上国)」と「機械」と競合するようになるからです。特に左脳的な仕事、論理的な仕事、知識的な仕事は競合しやすいのです。
詳しくは、ハイコンセプトを読んでいただきたいですが、ファーストリテイリング社の柳井正氏は、このような日本の状況に対して、次のようなコメントをしていました。
それはグローバル化の問題だ。10年前から社員にもいってきた。将来は、年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく。仕事を通じて付加価値がつけられないと、低賃金で働く途上国の人の賃金にフラット化するので、年収100万円のほうになっていくのは仕方がない。
要約すると、「途上国の人」や「機械」と競合するような仕事をしていると、年収100万円になってしまうということです。
ここで必要になってくるのが、共感能力です。この共感能力を生かすことができれば、「途上国の人」や「機械」と競合することがないのです。大前研一氏も、このハイタッチという能力に対して、100万ドル(約1億円)の価値があると言っています。
ただ、困ったことに、我々は共感能力を今まで教えてもらったことがありません。学校教育の中で、共感能力を伸ばすような時間はありませんでした。ひたすら、左脳的な訓練の場だったのです。もちろん、ある程度は社会生活の中で鍛えられてきていますが、これから生きていくのに十分な共感能力を持っているか?と言われれば、大変疑問です。
そこで、読書会です。読書会は、実は共感能力を鍛える場としては非常に有効なのです。読書会では、数分間の本の紹介の中で、実に色んなことを考えて実践します。最初はそこまで気が回らないかもしれないですが、何度か参加して慣れてくると、数えきれないほどの工夫をできるようになります。
例えば、「初参加の人は不安や緊張をしているからほぐしてあげよう。」、「まず、笑いを入れて相手の心を開こう。」、「興味を持って発表を聞いてもらえるようなキャッチ―な出だしで始めよう。」、「(話している途中で他の参加者の集中力が下がってると感じて)質問やクイズを入れて話に参加してもらおう。」、「印象に残るようなフレーズを言おう。」、そして何より「相手に楽しんでもらおう。」などなどです。
これらのことを最初は意識的に行っています。でも、最初から上手くいく人はいません。ところが、読書会の良いところはすぐ隣に、お手本がいることです。自分がトライして上手くできなかったことを、いとも簡単に行っているお手本がいるので、他の参加者の発表を聞いていると、その内容だけでなく、発表の仕方からも学ぶものが大変多くあるのです。そうして、試行錯誤していると意識的に、上記のようなことができるようになります。意識的にできるようになると、その内、無意識にできるようになります。
このように、読書会に定期的に参加して、工夫していると、共感能力がどんどん身に付いてくるのです。座学だけでは身に付けることができない、この共感能力を効率的に実践の中で身に付けることができる読書会は、非常に貴重だと思います。
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