
初版:1976年09月24日
出版社:岩波書店
著者:ミハエル・エンデ
モモは、こんな人にオススメ
1.時間に追われている人
2.ビジネス書が苦手な人
3.成果を出しても満たされない人
モモの内容
1.児童小説
2.不思議な少女モモと時間泥棒の物語
3.なぜ、現代人が幸せになれないのか?
モモで、人生の幸せが変わった!!
まさか児童小説に、一流のビジネス書以上の学びがあるなんて…
モモを読むまで、わたしはまったく予想していませんでした。
モモを読んで、わたしは人生の指標(幸せ)が変わりました。
少女モモが灰色の男たち(時間泥棒)から、奪われた時間を取り戻す物語です。
でも、その物語には人生の転機となる教えが隠されていました。
これは、時間泥棒が床屋のフージーさんを説得する一節です。
「60かける60で3,600。つまり1時間は3,600秒です。1日は24時間。3,600の24倍で、1日は86,400秒。1年はごぞんじのとおり365日。
そうしますと、1年はぜんぶで31,536,000秒になります。
10年ですと、315,360,000秒。
フージーさん、あなたはどれくらい生きるとお思いですか?」
「さあ。」とフージー氏はへどもどしました。「70歳、いや80歳くらいまで生きたいですね、できれば。」
「けっこう。ではすくなめに70歳までとして計算してみましょう。
つまり315,360,000の70倍ですな。答えは、2,207,520,000秒」
と、人生の時間を計算します。
意識している人もいれば、意識していない人もいると思います。
でも、人生は有限であり、残り時間も刻一刻と短くなっていっています。
時間泥棒は、そのことを明確にフージーさんに伝えます。
睡眠 441,504,000秒
仕事 441,504,000秒
食事 110,376,000秒
母 55,188,000秒
インコ 13,797,000秒
買い物 55,188,000秒
友人、合唱 165,564,000秒
秘密 27,594,000秒
窓 13,797,000秒
合計 1,324,512,000秒「この合計が、」と灰色の紳士は、えんぴつで鏡をもうれつないきおいでカタカタとたたきました。まるで機関銃の音のようです。
「この合計がつまり、あなたがこれまでに浪費してしまった時間なんです。どう思います、フージーさん?」
フージー氏はなにも言えませんでした。彼はすみっこのいすに腰をおろして、ハンカチでひたいをふきました。こおりつきそうなさむさなのに、汗が出るのです。
このようにフージーさんは、人生の残り時間を突きつけられます。
そして、フージーさんは焦ります。
なんて無駄な時間の使い方をしてしまったんだろう…と後悔します。
その結果、フージーさんの時間の使い方は一変します。
どんは変化が起きたのでしょうか?
本書では、こんな記述が続きます。
仕事がたのしいとか、仕事への愛情をもって働いているかなどということは、問題ではなくなりましたーむしろそんな考えは仕事のさまたげになります。
だいじなことはただひとつ、できるだけ短時間に、できるだけたくさんの仕事をすることです。
大きな工場や会社の職場という職場には、おなじような標語がかかげられました。
時間は貴重だーむだにするな!
時は金なりー節約せよ!これと似たような標語は、課長の事務づくえの上にも、重役のいすのうしろの壁にも、お医者の診察室にも、商店やレストランやデパートにも、さらには学校や幼稚園にまで、はり出されました。
だれひとり、この標語からのがれられません。
この状況は、現代社会にとても似ています。
誰もが1分1秒を貴重に感じ、時間を節約しようとします。
山手線のトビラが閉まるアナウンスがなると、乗客が一斉に電車に向かってダッシュします。
2分も待てば次の電車が来るにもかかわらずです。
しかし、この状況に対して、著者ミハエル・エンデ氏は、とても鋭い考察をしています。
時間をケチケチすることで、ほんとうはぜんぜんべつのなにかをケチケチしているということには、だれひとり気がついていないようでした。
じぶんたちの生活が日ごとにまずしくなり、日ごとに画一的になり、日ごとに冷たくなっていることを、だれひとり認めようとはしませんでした。
でも、それをはっきり感じはじめていたのは、子どもたちでした。というのは、子どもと遊んでくれる時間のあるおとなが、もうひとりもいなくなってしまったからです。
けれど、時間とはすなわち生活なのです。そして生活とは、人間の心の中になるものなのです。
人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそって、なくなってしまうのです。
……、その通りです。
この一節を読んで、ガツンと衝撃を受けました。
本当にガツンと。
自分の人生の指標が間違っていたということに気づいたのです。
わたしは、いままで「成果」を人生の指標にして生きてきました。
学業なら成績
競技なら戦績
仕事なら実績
という感じです。これらの「成果」で、自分の人生を測ってきました。
そのため、1分1秒でも多くの時間を、成果を上げるために使ってきたのです。
しかし、そうした人生では、生活はやせほそって、なくなってしまいます。
そして、モモを読んで、まったくことなる人生の指標を教えられました。
それが、人とのつながりです。
親との時間
恋人との時間
子どもとの時間
これらの「人とのつながり」を人生の指標にしたほうが、人生は豊かになります。
ミハエル・エンデ氏はモモを通じて、そのことを教えてくれています。
いまから40年前に書かれているとは思えない、すばらしい小説でした。
初版:1976年09月24日
出版社:岩波書店
著者:ミハエル・エンデ