
書籍名:諦める力
著者名:為末 大
出版日:2013年6月4日
出版社:プレジデント社
内容・要約
男子400mハードルで日本人初のトラック種目世界大会メダル獲得者となり、現在はフリーの立場でスポーツと社会、教育に関する幅広い活動を行っている為末 大氏。日本ではネガティブに思われがちな<諦める>という言葉を、むしろポジティブな意味に捉え直すための視点・考え方を様々なトピックスを絡めて提言しています。100mという花形種目からの転向や現役引退に際しての心境も赤裸々に綴られており、<走る哲学者>の名言が満載です。
印象に残った箇所
実際、競技人生を振り返って、自分の自信の核になっているのは勝ったことではなく、負けを受け入れ、そこから立ち直ったこと、勝負に負けたことくらいで傷つかなくなったことである。人生は長く勝負は無数にある。負けない工夫より、負けにふてぶてしくなるほうが最後は強い。
所感
「がんばれば夢はかなう」。一般的に、大人が未来ある子どもや若者に向かって発しがちな言葉ですが、為末 大氏はこの言葉の罠を、手を替え品を替え淡々と説きます。スポーツマスコミが喧伝する成功物語・美談の陰に隠れた語られることのない無数の挫折に思いを馳せながら、前向きに<諦める>道の可能性を示す姿は、正に求道者。批判にさらされることも厭わない姿勢に頭が下がります。人生の踊り場にさしかかった世代に刺さる一冊です。