
書籍名:紙の月
著者名:角田 光代
出版日:2014年9月18日
出版社:ハルキ文庫
内容・要約
銀行で契約社員として働く梅澤梨花が起こした横領事件。事件の背景にあったのは、マスコミが書き立てる憶測記事とはかけ離れた、人間なら誰しも陥り得るほんの少しのズレの積み重ねでした。なぜありふれた善意の人が他人のお金に手をつけたのか? そのお金で何を手に入れ、何を失ったのか?梨花の過去を知る人物の回想と彼ら自身のお金を巡る日常が重なり合い、梨花が破滅へと疾走する一部始終がスリリングに展開します。
印象に残った箇所
私は今まで、何を自由だと思っていたのだろう?何を手に入れたつもりになっていたのだろう?今私が味わっている、途方もなく馬鹿でかい自由は、自分では稼げないほどの大金をつかった果てに得られるものなのか、それとも帰る場所も預金通帳もすべて手放した今だから感じられることなのか。
所感
本筋の梨花の物語はもちろん圧倒的に面白いのですが、梨花の過去を知る三人のサイドストーリーも身近に感じられ、あるある、と共感。角田 光代氏の女の心の襞の描写にはいつも唸らされます。
物語中、横領したお金で若い彼と豪奢な日々を送る様が描かれていますが、そのような虚栄に満ちた生活よりも逃亡中の梨花のほうに魅力を感じてしまいます。自分にもそういう欲望、素養があるということなのか、ちょっと不安になってきました。
物語中、横領したお金で若い彼と豪奢な日々を送る様が描かれていますが、そのような虚栄に満ちた生活よりも逃亡中の梨花のほうに魅力を感じてしまいます。自分にもそういう欲望、素養があるということなのか、ちょっと不安になってきました。