
やる気には種類があると知っていますか?
やる気は脳内物質の働きです。人間はやる気に関して、7つの脳内物質をもっています。そのため、脳を最適化すれば能力は2倍になります。その方法をシェアします。
脳を最適化すれば能力は2倍になる
初版:2016年12月20日
出版社:文響社
著者:樺沢 紫苑
脳を最適化すれば能力は2倍になる
やる気には種類があります。なぜなら、やる気は脳内物質の働きだからです。その脳内物質は7種類あり、それぞれ特徴を持っています。そこで、まず7種類の脳内物質についてイメージをお伝えします。
人間の脳の仕組みは、非常に複雑で難解ですが、シンプルに考えると意外に理解しやすいものです。
人間の行動は、大きく分けると2つしかありません。「快」刺激を求めるか、「不快」刺激を避けるか。
「快」刺激を得たときには、ドーパミンとエンドルフィンが出ます。これらは記憶力、学習力、想像力など脳の機能を大きく高めてくれますので、あなたの成功確率は飛躍的にアップします。
逆に「不快」刺激を受けると、ノルアドレナリン、アドレナリンが分泌されます。
こちらは集中力、瞬発力を高め「火事場の馬鹿力」を発揮してくれます。ただし、長期に分泌しすぎると「コレチソール」を高め、免疫力を下げて、心と体をズタズタにして、心と体の病の原因となります。
こうした脳内物質が正しく分泌されていれば、やる気を最大限活用することができます。しかし、そのためには正しい生活習慣が必要です。
また、脳内物質を適量分泌させるには、規則正しい健康な生活習慣が不可欠です。
メラトニンを出して熟睡し、午前中からセロトニンを活性化する。昼はアドレナリン全開でバリバリ働き、夜はアドレナリンをオフににしてリラックス。仕事も頑張り、休みもしっかりとって、さらに明日も100%頑張れる健康な生活習慣です。
ところが、このような規則正しい健康的な生活習慣を送っている人は少ないです。また、多くの人が脳内物質の特徴も知らず、逆効果となる働き方をしています。その結果、残念ながら非効率な仕事をしてしまっています。
そのため、脳内物質のことを知るのは、ある意味でチャンスと言えます。
この脳内物質を正しく使う方法を学び、実行していただければ、あなたは今まで以上の何倍もの能力を発揮することが可能なはずです。あなが頑張らなくても、脳内物質が勝手に仕事をしてくれるのですから。
自分だけが脳を最適化する方法を知り、実践すれば、今までの何倍もの能力を発揮することができます。周りの人も、まさか脳内物質まで調べていません。そんなマニアックな人がごく一部です。
もしかしたら、10年後には脳内物質の特徴や、理にかなった働き方は常識になっているかもしれません。一時代昔、プロテインといったらアスリートしか飲んでいませんでした。でも、今では健康意識の高い一般人でも飲んでいます。このプロテインのように、脳内物質の存在も一般化する可能性はあります。
それでも、それまでの間、少しマニアックになることで、多くの恩恵を得ることができます。それでは、やる気に関する7つの脳内物質を紹介します。
- ドーパミン
- ノルアドレナリン
- アドレナリン
- セロトニン
- メラトニン
- アセチルコリン
- エンドルフィン
どういう特徴があり、どう活かしていけばいいのか、1つずつ紹介します。
ドーパミン
- 脳内物質・ドーパミンが分泌されると幸福を感じる
- 脳に報酬を与えると、モチベーションが高まる
- ドーパミンの報酬サイクルを回転させることで、目標達成できる
- ほどよい難易度の小さな目標(マイルストーン)を刻むことで大目標を達成できる
- 目標を達成した自分を強くイメージする。明確にイメージするほど実現確率は高まる
- 楽しみながら実行することが、成功の最大の秘訣
- 目標達成したら自分にご褒美を与える。それが次のモチベーションにつながる
- 目標達成したらそれに満足せず、すぐに次の目標を設定する
- 脳はチャレンジを好む。常にチャレンジを続けることで自己成長できる
目標を設定すると、体の中からやる気が湧いてきます。これはドーパミンの働きです。そして、一年や二年と長期の目標を達成するときには、このドーパミンの働きが欠かせません。
大目標を小目標まで分解して、自分に目標を与え続けてください。そうすると、常に新たな目標に向かって行動することができます。
「より困難な目標」を常に設定し続ける。これはドーパミンの強化学習のサイクルを回す秘訣であり、人生の成功法則とも言えるでしょう。
あなたも目標が実現したら、すぐに次の目標を設定してください。現状に満足したら、ドーパミンは出なくなります。
脳は非常に欲張りです。ドーパミンは「もっともっと」を好む物質です。より高い目標を設定し続けるかぎり、ドーパミンも出続け、あなたはさらなる高みへと上り続けていきます。
ノルアドレナリン
- 脳内物質・ノルアドレナリンは「闘争か逃走」という状況で分泌される
- 恐怖や不安などによってノルアドレナリンが分泌されると、注意・集中力、覚醒度がアップする
- ノルアドレナリンによるモチベーションアップは、短期で使って最大効果を出せる
- 締め切りを設定するだけで、仕事効率はアップする
- ドーパミン型モチベーション(=ほめる)と、ノルアドレナリン型モチベーション(=叱る)をバランスよく使い分ける
- 「不快を避ける」ノルアドレナリン型モチベーションにビジネスチャンスがある
- 「うっかりミス」が増えてきたら脳が疲れている証拠。休息が必要だという赤信号である
- 仕事は楽しくてもストレスになる。仕事のしすぎには注意しよう。
- 「仕事」を意識するだけでストレスになる。スマホや携帯は切って、仕事を完全に忘れることも大切
怖い上司の前で、ミスしないようにしよう!と心がけるのは、ノルアドレナリンの働きです。ところが、このノルアドレナリンで人を教育するのは得策ではありません。なぜなら、ノルアドレナリンは短期的なモチベーションだからです。
いつも叱ってばかりの親の子どもが必ずしも、行儀がいいわけでも、勉強ができるわけでも、なにかに熱中しているわけでもないのと同じです。叱ってばかりいても、人の長期的なやる気は喚起できません。
ノルアドレナリンが効果を発揮するのは、あくまでも短期決戦に限定されるのです。
一部の企業では人件費削減のために、どう考えても不足した人員で、過酷な労働を長期的にさせているそうです。これは明らかに間違っています。
ノルアドレナリン型モチベーションは、半年、1年と続けると、必ず破綻します。燃え尽き、うつ病になる人も現れるでしょう。
死ぬ気で頑張れるのは、長くても1ヶ月くらいまで。
それ以上は疲労が蓄積し、むしろ効率ダウンにつながります。
アドレナリン
- 脳内物質・アドレナリンは、興奮や怒りと関連して分泌される
- アドレナリンは、身体機能を瞬間的に高めてくれる
- 腹の底から大声を出すとアドレナリンが出る
- ピンチに陥ってもあきらめるな。勝負物質アドレナリンがあなたを助けてくれるから
- 心臓がドキドキするのは成功の証拠
- 過剰な興奮や緊張は、深呼吸をするだけで収まる
- 満員電車はアドレナリンを分泌させ、かなりストレスになっている
- 昼間はバリバリ働き、夜間はゆっくりと休みアドレナリンをオフしよう
- アドレナリンをオフにする7つの習慣は「1興奮系娯楽はほどほどに」「2風呂、シャワーは温度に注意する」「3入眠前に激し運動をしない」「4遅くまで残業しない」「5ゆるい時間を持つ」「6家族や仲間と過ごす」「7休息を意識する」
アドレナリンは身体能力を高める脳内物質です。そのため、アスリートには欠かせない脳内物質です。
しかし、現代人にとっては要注意な脳内物質でもあります。なぜなら、意識的にオフにしないと四六時中で続けてしまい、病気の原因となるからです。そのため、心を緩め、リラックスする習慣を身につけましょう。遊ぶことは、仕事ができる証でもあるのです。
いわゆる「仕事人間」は、2つのタイプに分かれます。
1つは、バリバリと猛烈に仕事をこなし、仕事で大きな成功を手にし、長生きする人。もう1つは、仕事人間で頑張り屋さんだったのに、正に働き盛りの40~50代で突然、心筋梗塞や癌などの大きな病気になってしまう人。
2つのタイプの仕事人間の違い、天国と地獄の境目はどこにあるのでしょうか?
「病気になった人は、運が悪いんだ」
そのように思われるかもしれませんが、決して「運」だけではありません。
ほとんどの病気、特に成人病にかかる方は、病気になってもおかしくない生活習慣をしています。過労。緊張の連続。休息不足。睡眠不足。運動不足。偏った食事など。身体によくない無理の多い生活習慣です。
この過労や緊張の連続によってアドレナリンが出続けます。そうすると、コレチゾールという脳内物質が出てきて、免疫力を低下させます。その結果、心筋梗塞や脳梗塞になるのです。
仕事をバリバリこなしていた人が、ある日突然心筋梗塞になったという話を聞いたことがないでしょうか?それはアドレナリンをオフにしてこなかったからかもしれません。
セロトニン
- 癒し物質・セロトニンは、覚醒、気分、心の安定と深く関係している
- セロトニンを活性化する方法は「日光を浴びる」「リズム運動」「咀嚼」の3つ
- カーテンを開けて寝ると、寝起きがスッキリする
- 起床後2~3時間の脳のゴールデンタイムを有効利用しよう
- 脳を活性化するには朝食は不可欠
- 煮詰まった時の気分転換に役立つ「セロトニン気分転換仕事術」は「1外食ランチ」「2歩きながら考える」「3深呼吸」「4音読」「5首回し運動」「6上記の気分転換の組み合わせ」「7セロトニン活性化を習慣にする」の7つ
- 感動の涙には「癒し」の効果がある。共感力を磨けばセロトニン神経が鍛えられる
- 普段からセロトニン神経を鍛えておけば、うつ病の予防にも役立つ
セロトニンを上手に活用することで、2倍3倍と仕事ができるようになるといいます。
早起きをすると仕事がはかどる、あるいは、午前中にどんな仕事をどれだけこなすかで、1日が大きく変わる。これは医学的にも正しいと思います。
朝起きてからの2~3時間は、「脳のゴールデンタイム」と呼ばれます。脳が最も活き活きと活躍してくれる時間帯なのです。その時間帯に何をするかで、1日でこなせる仕事量、さらには仕事の質が決定されます。
そして、こう続きます。
あくまで私の実感ではありますが、脳のゴールデンタイムを活用する場合としない場合とで比較すると、仕事の効率が3倍くらいは変わります。
脳のゴールデンタイムを活用する仕事術は、「神・時間術」という1冊の本になっています。わたしも実践して、今までの2倍以上は仕事ができるようになっています。また、仕事以上に遊びにも効果を感じています。
今までは、ほとんど遊びの時間を取ることなく、仕事をしてきていました。ところが、神・時間術を実践して、遊びの大切さが身にしみてわかりました。遊びの時間も大幅に増え、真剣に遊ぶようになっています。それでも、今までの倍以上の仕事をできているわけですから、このセロトニンを活用した神・時間術はすごいです。
メラトニン
- 睡眠物質・メラトニンが分泌されると眠気を生じる
- 睡眠物質メラトニンは、熟睡、疲労回復のために不可欠な脳内物質である
- 不眠は心や身体の病気の前兆かもしれない
- メラトニンを出す方法は以下の7つ
1.部屋を真っ暗にして眠る
2.入眠前に薄暗い部屋でリラックスする
3.入眠前に蛍光灯の光を浴びない
4.深夜のコンビニで立ち読みしない
5.入眠前にゲーム、スマホ、パソコンをしない
6.日中のセロトニンの活性化
7.朝、太陽の光を浴びる - 1日7~8時間ぐっすり眠ることを目標にしよう
残念ながら、睡眠を軽視している人が多いです。睡眠を削って仕事をすることが美徳だという風潮すらあると感じます。
しかし、それは大きな間違いです。睡眠を削っては、最高のパフォーマンスを発揮できません。もしスポーツ選手が二日酔いでふらふらの中、プレーをしていたら、どうでしょうか?なんて自己管理のできてない選手だと呆れることでしょう。
睡眠不足は二日酔いと同じです。睡眠は、最高のパフォーマンスを発揮するために必要なことだからです。
朝から晩までパワフルに活動しつづけて、疲れというものを知らないのか?
パワフルに活動する人とそうでない人の一番の違いは、私は「睡眠」だと思います。昼間パワフルに活動する。でも、夜はきちんと深い睡眠がとれているので、昼間の疲れを完全回復できる。結果として、毎日パワフルに活動できるのです。
そして、こう続きます。
私は、最も重要な仕事術を1つ選べと言われたら、「きちんと睡眠をとること」と答えます。睡眠は人間の活動の基本です。きちんと睡眠がとれないと、心も体もズタズタになります。仕事どころではありません。
ある研究によると、トップ10%に入っていた優秀な学生の睡眠時間を「7時間以下」に制限したところ、その成績は下位9%まで落ち込んだそうです。
アセチルコリン
- 脳内物質・アセチルコリンは認知機能とひらめきに深く関わっている
- やる気が出ないなら、まず始めること。「作業興奮」によってやる気がわいてくる
- 26分間の昼寝で脳の効率は34%も改善する
- 「運動」は脳を活性化する最も簡単な方法
- シータ波を出すとひらめきが生まれやすくなる。シータ波を出すためには「外に出る」「昼寝をする」「座ったまま手足を動かす」「好奇心を刺激する」
- アイデアを出したければ「創造性の4B」(Bar、Bathroom、Bus、Bed)を意識する
- 脳には時間ごとに適性がある。午前中は論理作業に向き、午後や夜は創造的作業に向く
- 凄いひらめきを得るためには、その元となる情報を十分にインプットしておくこと。そして、ひらめきはすぐにメモすること
- 喫煙を続けるとアセチルコリンが生成されづらくなる
午前中はセロトニンが活性化されており、午後はアセチルコリンが出ています。
そのため、午前中に適した仕事と午後に適した仕事があります。この割り振りを間違えないだけでも、仕事効率は格段に上がります。アセチルコリンが分泌される午後には、課題解決のためのミーティングなどクリエイティブな仕事を入れるといいようです。
午後になると脳は疲れてきて、高度で論理的な作業効率はみるみる低下していきます。実は午後から夜にかけては、アセチルコリンが分泌されやすくなってきます。午後にちょっと眠気が差すような状態というのは、アセチルコリンの活性が高まって、シータ波が出やすい状態とも言えるのです。
つまり、午後になると脳が疲れてくるのは、チャンスでもあるのです。論理による思考の縛りがゆるくなり、思いがけない発想ができるからです。
夜の遅い時間帯も、シータ波が非常に出やすいと言えます。「ひらめき」や「斬新な発想」などが得られやすいため、クリエイティブな作業に向いているでしょう。アセチルコリンは「想像力の源」でもありますから。
ひらめきとは、1つ1つの記憶が意識的に結びつけられるのではなく、アセチルコリンの働きによって、無作為に勝手につながったときに起こります。
エンドルフィン
- 脳内麻薬・エンドルフィンが分泌されると、至福感・恍惚感が出る
- 「アルファ波」が出るような癒しのとき、リラックスしたときにエンドルフィンは分泌する
- エンドルフィンが分泌されると、集中力・想像力・記憶力が高まる
- エンドルフィンは究極の癒し物質。精神的ストレスを解消し、身体を修復し、免疫力を高める
- エンドルフィンを出す簡単な方法としては「運動」「激辛料理を食べる」「油っぽいものを食べる」「チョコレートを食べる」「熱い風呂に入る」「鍼治療」などがある
- 目標は細分化し、行動はToDoリスト化しよう。やるべきことを明確化することがフローの準備状態を作る
- 人に感謝する。人から感謝されるとエンドルフィンが分泌される
- 仕事を頼まれた時は「喜んで」やる癖をつける。嫌々やればノルアドレナリンが出て、喜んでやればエンドルフィンやドーパミンが出る
- 失敗に感謝しよう。そうすると失敗が経験として蓄積され、次のモチベーションが湧いてくる
エンドルフィンが脳内麻薬と呼ばれるには理由があります。あのモルヒネ以上の鎮痛作用を持っているからです。
エンドルフィンは、強力な鎮痛作用を持つ脳内物質です。「モルヒネ」の6.5倍もの鎮痛作用を持ちます。モルヒネといえば麻薬の一種であり、末期がん患者などの激しい痛みなど、医療でも使用される鎮痛剤です。その何倍もの鎮痛作用を持つ物質が、私たちの脳内で分泌されるのです。
これだけの鎮痛作用を使えば、困難な仕事やストレスのかかる仕事でも乗り越えることができそうです。では、どうすればエンドルフィンを意識して使うことができるのでしょうか?
それは、「感謝」することです。
なぜ「感謝の心」を持てる人が成功するのか?
その理由は、人に感謝するとエンドルフィンが分泌されるからです。
人に感謝するときも、人から感謝されるときも、人間は幸福感を抱くのです。