「子どもの心のコーチング」自立型リーダーを育てる3つのポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

ほめる・叱る・ご褒美、どれが効果的だと思いますか?

実はすべて不正解です。なぜなら、正しい動機づけを教えられていないからです。本書でわかった自立型リーダーを育てる3つのポイントをシェアします。


子どもの心のコーチング

初版:2007年10月17日

出版社:PHP研究所

著者:菅原 裕子

人を育てるには、なにが必要か?

本書は子育ての本です。しかし、子育て以外にも活用できる考え方やノウハウが詰まっています。「子ども」を部下や後輩に、「親」を自分に置き換えて、考えてみてください。目から鱗の連続です。

子供でも部下や後輩でも、人を育てるのに必要なことは、なんでしょうか?著者は、人を育てることは植物を育てるのと同じだといいます。

みなさん、一度は植物を育てたことがあるでしょう。
小学生のころ、朝顔の観察日記をつけました。種をまき、芽が出て、成長し、花をつけ、来年のための種をとるまでの観察をしました。種に土をかけて、日当たりのよいところにおいておいて、水を与えるだけで、朝顔は立派に育ちました。朝顔が必要とするすべての情報は、種の中に宿っていたからです。私たちはしなければならなかったのは、環境を整えることだけでした。
人間の子どもも同じです。子どもは時間をかけて自分の知っていることを発見していきます。自分の力で生きることを学べるように、親が環境を整えてあげれば、子どもは自分の中にある知恵を芽生えさせることができるのです。

つまり、人が育つ環境を整えることが、人を育てることです。

もっと早く成長してほしいと思って、植物の茎を引っ張っても意味はありません。人を育てることも同じです。今に焦点をあてるのではなく、未来に焦点をあてて、人に接する必要があります。

私たち親は、とにかく「今」に焦点をあてがちです。今、子どもは安全か。今、子どもは親の思うとおりりにふるまっているか。今。子どものまわりで親の望むとおりのことが起きているか。今、親の望む子でいるかー。
「今」に焦点をあて、そのとおりになっていないと口を出し、手を出します。そうすることで親は、今の安心と秩序を手に入れるのです。
しかし、その一時の安心と秩序に焦点をあてすぎると、子どもの一生から主体性とそこから生まれる喜びの芽を摘み取ってしまうことになります。
子育てをするとき、私たち親が目指すべきは子どもの未来です。今の子どもがどうあるか以上に、子どもが成長した姿を目指して子育てをしなければなりません。今、親がやっていることの延長線上に本当の子どもの幸せがあるのかどうかを、一度立ち止まって考える必要があります。

教育する立場にいると、ついつい相手の「今」を見てしまいがちです。そして、「今」できていないことに対してフィードバックをしがちです。しかし、それは無理な話です。

なぜなら、成長するには時間がかかるからです。植物が花を咲かせるのに時間がかかるのと同じでしょう。そのため、「今」に焦点をあてるのではなく、「未来」を見てあげる必要があります。

望ましい方向に成長していっているのか、改善しようとしているか、1ヶ月前より改善できているか、そうしたことを念頭において接する必要があります。その上で、本人が成長する環境を整えることが大事です。これが人を育てることです。

自立型リーダーを育てるには、なにが必要か?

先ほどは、教育の基本的なコンセプトを述べました。では、どんなことを教えたり、どう接していけばいいのでしょうか?具体的な教育内容と教育方法を3つ紹介します。

  • ヘルプではなく、サポート
  • 責任
  • 正しい動機づけ

どういうことか、1つずつ解説していきます。

ヘルプではなく、サポート

相手の「今」ではなく「未来」に焦点をあてるとお伝えしました。それは、具体的にはヘルプではなく、サポートをすることです。

「援助」という言葉を辞書で調べると、「HELP(ヘルプ)」と「SUPPORT(サポート)」という言葉が並んでいます。しかし実際には、この二つの言葉には天と地ほど大きな違いがあります。
ヘルプは「できない」人のために、その人にかわってやってあげること。保護者がするのはヘルプです。一方サポートは、人を「できる」存在ととらえて、そばで見守り、よりよくなるために必要なときに手を貸すこと。サポートこそがまさに親の仕事なのです。

これは、よく魚釣りに例えられる話です。飢えた人がいたとき、その人に魚を与えることと魚を釣る技術を与えること、どちらが本質的な問題解決になるでしょうか?

魚を与えることがヘルプで、魚を釣る技術を与えることがサポートです。もちろん、緊急でヘルプが必要なこともあるでしょう。しかし、いつも緊急な事態ばかりではありません。そうしたときは、相手の未来に焦点をあて、サポートをしていく必要があります。

ただし、サポートをしていくとき、1つの覚悟が求められます。それは、いずれ自分は必要とされなくなるということです。なぜなら、育てた相手がいずれ自立していくからです。

子どもを「できない」存在ととらえ、 子どもの人生を支配したときは、親は長い間、子どもの世話をしてあげるという「しなければならない」仕事があります。ところが、自分で「できる」ようになるサポートをし、子どもがどんどん自分でいろいろなことをやり始めると、親はいずれ必要とされなくなります。
子どもの自立をサポートできる親は、親自身が自立していて、子どもから必要とされなくなることを恐れない人です。子どもの人生を支配し、そこに頼るのではなく生きるべき自分の人生を持っている人です。
ここで「自立」の意味をはっきりさせておきましょう。自立とは、人をあてにしなくても自分の力で生きられることと、自分ではできない時に素直に人の援助を求められる能力を意味します 。

育てた相手が自立することは、嬉しい反面、寂しいことでもあります。多くの人が、この寂しさに負けてしまいます。だから、いつまでも自立できない人を文句を言いながら、かわいがります。この点をよくよく理解して、相手が自立するようにサポートしていく必要があります。

責任

ハンバーガー

責任を教えることも、とても重要です。なぜなら、責任感がなければ問題の原因が自分にあると捉えられないからです。責任感があれば、自身を反省して改善していくことができます。

責任を学んでいる子どもは、そのプロセスで多くのことを学びます。その経験をくり返すことで、自分次第で結果が変えられることを知り、耐性や問題解決能力が育ちます。現実を見る勇気が育ち、成長しようという意欲も生まれます。反対に責任を学ばない子は、反応する能力に欠けるため、変化に対応することがうまくありません。

この責任感を人に持たせるには、大前提があります。それは、自己肯定感が高いことです。

人が生きていくうえでもっとも大切な感情が「自己肯定感」です。
自己肯定感とは、自分の存在を肯定する感覚です。自分はここにいるべき人間であり、周りの人は自分の存在を喜んでいる。自分の存在が家族に幸せをもたらしていて、そんな自分でいることがうれしい。「私は自分が好きだ」という感覚です。この感覚は、私たちが自分として生きていくうえでもっとも基本となるもの。存在することへの自信です。

この自己肯定感が低いと、問題の矢印を自分に向けることができません。一旦、矢印を自分に向けてしまうと、拠り所がなくなってしまうからです。逆に自己肯定感が高い人は、直接の非が自分になくても、責任を感じます。そして、自分に矢印を向けることができます。

そういう人は、とても器の大きな人間と見えるでしょう。そして漢気や人徳のある人として、尊敬されるでしょう。

では、自己肯定感を育むには、どうすればいいでしょうか?それは、よいセルフイメージを持たせることです。

人は誰もが、自分はこういう人間だという自画像=セルフイメージを持っています。それは長い間の経験によってかたちづくられていますが、もっとも大きな影響力を持っているのが、幼少期に親によって書き込まれた言葉です。
肯定的な言葉や思いをたくさん書き込まれた子は、自分に対して肯定的なセルフイメージをもつことができます。自分に対して肯定的なセルフイメージをもつことができれば、自分を好きになることは簡単です。これこそがまさに自己肯定感です。
一方、否定的な書き込みをたくさん受けた人は、そんなダメな自分を好きになることができません。そして、セルフイメージどおりダメな大人へと成長していきます。

つまり、お前はダメだとなじっても、逆効果だということです。育てるためにという名目で、相手に否定的な言葉を投げかける人がいますが、それは意味がありません。

相手のセルフイメージが傷つき、自己肯定感が下がります。そうすると、責任を背負うことができなくなり、改善もできなくなります。それを見て、一層強くダメ出しをして、さらにセルフイメージが下がります。ただの悪循環です。

そうではなく、肯定的な言葉を投げかけてください。そうすることから、相手に責任を育むことができます。これは本当に効果があります。嘘だと思われた方、誰か一人でもいいので、半年間肯定的な言葉を投げかけ続けてください。その人は見違えるほどの変化を遂げるでしょう。

正しい動機づけ

ほめる・叱る・ご褒美、どれが効果的だと思いますか?

実は、すべて間違っています。なぜなら、正しい動機づけを教えられていないからです。

ほめることも叱ることも、物やお金を与えることも、すべて外からの働きかけで、外から子どもをその気にしようとする行為です。本当のやる気は外からはきません。本当のやる気は、子ども自身の中から湧いてくるものです。親は子どもが幼いうちに、子どもの中に、子ども自身の中から湧き出る、やる気の種をまくことができるのです。
そのやる気の種は「人の役に立つ喜び」です。この動機づけの種を植えることで、子ども一生、健全なやる気を保つことができます。この動機づけで動くとき、私たちは大きな充実感を体験できるのです 。

ほめられたい・叱られたくない・ご褒美がほしい。こうした動機づけではなく、「人の役に立ちたい」という動機づけを教えることがいいそうです。

ここで、「叱る」ことについて詳しく説明します。なぜなら、世の中には不必要に叱っている人が多いからです。

実は、親は叱っているのではなく、怒っているのです。それは怒っている親の都合によるもので、子どものためではありません。子どもが親の思いどおりにふるまわないので、腹を立てて怒るのです。思いどおりにならないので、感情的になってその怒りをぶつけているのです。そして、怒りを使って子どもを支配しようとします。怒ることで子どもを親の思いどおりに動かそうとするのです。
感情的になって子どもを怒るとき、子どもはただの感情のはけ口にすぎません。問題は子どもではなく、子どもは単にきっかけをつくっただけ。怒ってる親自身が問題を抱えているのです。
それが頻繁であるとターゲットにされる子どもの人格が危機にさらされます。親の怒りに動機づけられた子どもは、「怒られないために」という後ろ向きな理由で行動を起こすようになります。その動機づけが習慣になってしまうと、怒られないと行動を起こしません。そして行動するときはいつも、自分に怒りをぶつけた親に腹を立てながら行動することになります。

そして、こう続きます。

怒ること、叱ることの多い親は、一度自分が何に腹を立てているのか見つめ直してください。そこには、子どもに対する「〜べき」という考えがあるのではないでしょうか。子どもは親の言うことを聞くべき、子どもは口答えをすべきではない…。その「〜べき」があなたに腹を立てさせます。でも、その「〜べき」は本当に正しいでしょうか。理にかなっていますか?
理かなっていると思うなら、怒らずに、子どもにその理(ことわり)を教えてください。もし、理にかなっていないと思われるなら、親の不機嫌を子どもに押しるけるのはやめましょう。

いかがでしょうか?耳の痛い言葉では、なかったでしょうか?

もし、叱る機会は多いが、自分が叱ってるのは道理にかなっている。叱ることが多いのは、相手が悪いからだ。このように思われる方は、先ほどの自己肯定感が低いのかもしれません。

人を教える・育てるという立派な立場にいるわけですから、高いセルフイメージをもってください。自己肯定感を高めて、人徳のある人を目指してみてはいかがでしょうか。

笑顔

一方で、ほめる・叱る・ご褒美を使わない場合、どう教育すればいいの?という疑問もあると思います。たしかに、具体的な育て方は重要です。

この場合、「行動の強化」を使います。

たとえば、子どもに自分で朝起きることを教えたいとしましょう。

それなのに、子どもが寝坊してきました。そのとき、叱ってはいけません。寝坊することで、自分が遅刻して困るという経験をさせます。

その上で、どうすれば朝起きられるか?ということを子どもと話し合い、改善策を考えます。

そして、子どもが改善策を実行して、自分で朝起きてくる日を待ちます。これが1日でできるかもしれませんし、1ヶ月かかるかもしれません。

でも、待っていれば、その日が来ます。そのとき、「一人で起きられたね。嬉しいよ。わたしも朝忙しいから、一人で起きてくれると助かるわ。ありがとう。」と述べます。

これが「行動の強化」です。

行動の強化で述べるのは、褒め言葉ではありません。ご褒美を与えることでもないです。自分の気持ちや、感謝の言葉を述べるのです。そうすると、相手に「人の役に立つ喜び」を育みながら、望ましい行動を教えていくことができます。

以上が自立型リーダーを育てる3つのポイントでした。

20代読書会に申し込む

20代読書会は、年間1,000人以上が参加しています。東京で最大の読書会です。毎週開催しており、読書好きが集まって楽しく社外のネットワークを広げています。


申し込む

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*