
離婚の仕組みを知ってますか?
日本では3組に1組が離婚しています。しかし、離婚は連帯保証人になるよりも重いリスクがあります。「損する結婚 儲かる離婚」で、人生最大のリスクに対処する方法がわかりましたので、シェアします。
損する結婚 儲かる離婚
初版:2017年02月20日
出版社:新潮新書
著者:藤沢 数希
目次
離婚は人生最大のリスクだった!
- 離婚すると財産の半分を支払う
- 相手が浮気をしたら裁判で簡単に離婚できる
- 不貞行為をした相手から莫大な慰謝料が取れる
離婚に対して、こうしたイメージがあるのではないでしょうか?しかし、これらはすべて間違いです。
- 離婚すると財産のほぼすべてを支払う
- 相手が浮気しても裁判で離婚するには5-10年かかる
- 慰謝料は200万が限界で、収入の高い側がお金を失う
残念ながら、これらが離婚の現実です。
大人の男女にとって最大のリスクは「結婚相手」である。実際の結婚と離婚でどう金が動くのか、世間には驚くほど正確に情報が伝わっていない。知ってるはずの弁護士も建前しか話さないのだ。しかし、結婚相手選びは株式投資と同じ。夫婦は、ゼロサムゲーム=お互い食うか食われるかの関係にある。そんな身もフタもない男女のマネーゲームの真相と適切な結婚相手の選び方を、具体的なケースをもとに解き明かす。
と、本書の冒頭に書かれていますが、その通りです。いまの日本では3組に1組が離婚しています。
これはガンで死亡する確率を同じです。ガンであれば、予防もしますし、保険もかけます。これはガンで望んでいるわけではなく、リスクとしてガンで死ぬことを想定しているからです。
離婚も同じです。もちろん、離婚を望んで結婚する人なんていません。しかし、これだけ頻繁に起こり、人生最大と言えるリスクを背負うわけですから、事前にリスクとして想定しておくべきです。
離婚で発生する”お金”の支払い
それでは、離婚で発生するお金について見ていきましょう。
- 慰謝料
- 財産分与
- 婚姻費用(コンピ)
はい、この3つが離婚で発生する費用です。聞きなれないものもあると思いますが、1つずつ本書を引用しながら解説します。
慰謝料
これはもっともイメージしやすいものです。離婚の原因を作った人が、配偶者に支払うお金です。
最初に慰謝料について簡単に説明しよう。これは精神的な苦痛に対する損害賠償金で、浮気など離婚の原因を作った方が支払うものだ。しかし、日本は慰謝料の相場はある程度予測可能で、アメリカのようにときにべらぼうの金額になることもない。アメリカは、社会で二度とこういうことが起きないように、と見せしめとして社会的ペナルティを科すために相手の所得や会社だったら規模によって金額を変えることがあるのだが、日本では慰謝料は慰謝料である。
そして、こう続きます。
それで日本では浮気などの慰謝料はせいぜい100万や200万ぐらいの話である。一方的に片方が悪く、裁判官に嫌われるともっと高くなることもあるが、通常は男女の仲でどちらかが一方的に100%悪いということはなく、また明確な証拠が出てくることも稀だろう。
ということで、芸能人やスポーツ選手の離婚で、慰謝料○億円という報道を目にすることもあります。しかし、それは正しい表記ではありません。法的な慰謝料は、どんなに収入が高くても、100万や200万ということのようです。
では、報道などで目にする高額な慰謝料は、一体なんの話なのでしょうか?それは、次で解説する財産分与と婚姻費用のことでした。これが、非常に恐ろしいリスクです。ぜひ、みなさん正確に理解してください。
財産分与
財産分与は、結婚後につくった財産を夫と妻で2等分するということです。
財産分与とは、離婚する際にふたりの財産を分割するのが目的で、対象となるのはあくまで結婚してから形成された共有財産だけとなる。これは簡単な計算問題をやれば理解できるだろう。
たとえば、こんな貯金額の2人が離婚したとしましょう。
夫:(結婚前)300万→(離婚時)3000万
妻:(結婚前)500万→(離婚時)800万
そうすると、夫婦で作った財産は、(3000万-300万)+(800万-500万)となり、3000万となります。もちろん、そのうち夫が2700万は稼いできたわけです。
そして、離婚の際は、この3000万を2等分します。つまり、1500万ずつに分けるのです。妻は結婚後に作った貯金が300万ですから、差額の1200万(1500万-300万)を夫から受け取ります。
ここで、最大のポイントが1つあります。それは、財産分与に”離婚理由は考慮されない”ということです。つまり、上記の例の場合、夫が妻に1200万支払いますが、離婚理由が妻の浮気でも、それは同じなのです。
徐々に離婚の恐ろしさがわかってきましたね。それでは、次は離婚最大のリスクである婚姻費用を説明しましょう。
婚姻費用(コンピ)
婚姻費用は”コンピ”と呼ばれています。
それでは結婚の経済価値を決める上で核心的なコンピについて解説していこう。コンピの計算方法だが、夫の所得、妻の所得子供の数と年齢だけから、家庭裁判所でほぼ機械的に決まるのだ。
離婚騒動が勃発したあとに、妻が家庭裁判所で婚姻費用の審判を申請すると、夫を裁判所に呼び出してくれて、目の前でコンビを簡単に算定し、婚姻費用の支払い命令を書いた紙をもらえる。この紙切れは最強の証書であり、コンピが滞った途端に預金や給料などなんでも差し押さえが可能である。
引用にある通り、夫の所得、妻の所得子供の数と年齢から自動的に計算されます。そこで、以下の条件で婚姻費用を計算してみました。
夫:年収1000万、妻:年収0万、子供なし
夫から妻に年間190万の支払い
とても簡単に計算できますので、是非みなさんも計算してみてください。
そして、この婚姻費用のポイントは、一方の配偶者が家庭裁判所に申請してから離婚が成立するまで問答無用に発生し続ける、ということです。これが恐ろしいのです。
なぜなら、婚姻費用をもらう側は、離婚成立までの期間を、できるだけ引き伸ばそうとします。そのため、まともな話し合いには応じてくれず、住所さえ告げずに別居するということも可能です。そうすると、裁判で離婚を成立させるしかありませんが、これが時間がかかるのです。
裁判で離婚を成立させるには、最短で5年はかかります。10年かかることもあります。仮に7年で離婚が成立したとしても、上記の例で計算すると、190万×7年=1330万となります。相当大きな金額になります。
このとき、すでに説明したように婚姻費用に加えて、財産分与も発生するわけです。仮に二人の財産は、以下のような状態だったとします。
夫:(結婚前)200万→(離婚時)2000万
妻:(結婚前)500万→(離婚時)500万
そうすると、(2000万-200万)+(500万-500万)=1800万を2等分することになります。なので、夫から妻へ900万を支払うことになります。
婚姻費用1330万と財産分与900万の支払いです。合計すれば、2230万です。年収1000万(手取り700万)で貯金2000万という堅実な資産を形成してきた人が、離婚ですべての財産を失うことになりました。
財産分与でも書いたことと同じですが、ここでもポイントがあります。それは婚姻費用も、”離婚理由とは関係ない”ということです。たとえ、上記の例で妻が浮気をして離婚することになったとしても、夫が1330万の婚姻費用を払うのです。
つまり、結婚は非常に高いリスクをともなう契約なのです。
結婚というのは、婚姻届に判を押した瞬間から、所得の多い方から所得の低い方へ、お互いが使える金額が同じぐらいになるように金銭を支払い続ける義務が発生する契約である。
これが本書で書かれている結婚という契約の本質です。
間違いは許されない結婚のタイミング
離婚時に発生するお金(慰謝料・財産分与・婚姻費用)について、解説してきました。
夫婦2人の収入が同程度であれば、なんのリスクもありません。しかし、自分が高収入になる場合は、慎重に結婚のタイミングを考えたほうがいいです。
スポーツ選手俳優の離婚にまつわる巨額の支払金額はよく話題になるが、離婚が本当に恐ろしいのは、実は起業家なのである。創業する前に結婚して、会社がとうとう上場し、そして離婚ということになると、夫の持ち株の半分がいきなり奥さんのものになるのだ。これはハゲタカ・ファンドどころの騒ぎではない。
ハゲタカ・ファンドは株を買い占める時に、その分の現金を置いていくが、奥さんはなんの支払いもなしにいきなり株の半分を持っていくのである。しかも、離婚騒動になっているということは、夫のことを破滅させてやりたいぐらいに思っていたりするのだ。著者はベンチャー・キャピタルが投資するときに、ビジネス・モデルや経営者の資質を厳しく審査するのになぜ、奥さんとの関係のデューディリジェンスを入念に行わないのか不思議でしょうがない。奥さんは企業の資本政策において、極めて重要なリスク要因となりうるのだ。
株式の半分を失うなんて、とんでもなく恐ろしい事態です。
たしかに、起業して上場を考えている男性は少ないでしょう。それでも、大型のボーナスなど大きなお金が入る予定があれば、その後に結婚した方が得策でしょう。そうすれば、少しは財産分与のリスクを抑えることができます。
ちなみに、本書で紹介されていましたが、Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグは、上場して株式公開をした日に入籍したそうです。財産分与のリスクを考慮したのかもしれません。
うだつの上がらない男とは結婚しない
男性でも女性でもいいんですが、まったく収入のない相手を好きになるということもあるでしょう。その場合は、どうすればいいんでしょうか?
もちろん、収入がないからといって好きになってはいけないということではありません。
自分より所得が低く貧乏な男を好きになってしまったならば、いっしょに住むのもよし、子供を作るのもいいだろう。そうして愛にあふれる家庭を築くことはとても素晴らしいことだと思う。
ただ、多くの男はなんだかんだいって、家事や育児の助けにはならない。それだけでも大変なのに、さらに貧乏な夫を養う法的義務である結婚まで背負い込むことはないだろう。シングルマザーは大変だというけれど、貧乏な男と結婚してしまえば、子供を養うだけでなく、その上に夫まで養う義務を負うのだ。結婚をせずに、事実婚にしておけばコンピ地獄になることはない。事実婚なら夫の経済的な価値はゼロだが、結婚してしまえば、いきなり大きな負債を背負いこむようなものなのだ。
もし、貧乏な男と家庭を作りたいなら、マイナスよりもゼロのほうがいいというのは自明ではなかろうか。
その場合は、事実婚です。
結婚して契約を結んでしまうと、大変なリスクを背負います。自分が養っている男が浮気して、離婚騒動に発展しても、収入の高い女性側が婚姻費用を払い、財産分与を払うことになります。
子供の面倒を見ながら、浮気をした男に生活費を払い、離婚して全財産を失うことになります。女性からすれば、やっていられないでしょう。しかし、結婚の契約さえ結んでいなければ、婚姻費用も財産分与も発生しません。
相手がうだつの上がらない男だったら、結婚は慎重に考えたほうがいいでしょう。
資産家は玉の輿にならない!?
土地持ちの資産家と結婚!
こうした女性がいれば、まわりの友人から玉の輿として羨ましがられるかもしれません。しかし、婚姻費用と財産分与を理解していれば、大した玉の輿ではないことがわかります。
結婚と離婚でどのように金が動くのかを理解すれば、女性はどういう男性を結婚相手として選ぶべきか、少なくとも狙うべきか、ということが見えてくる。まず、多くの女性が誤解しているのだが、文字通りの金持ちと結婚しても、それ自体では法的にしっかり守られる利益は手に入らない。これは重要なことなので、詳しく解説していこう。
離婚によって動く大きな金は婚姻費用と財産分与であり、これは結婚してから稼ぎ出された金額に基づくものなので、当たり前だが、結婚する前にすでにあった財産は関係ないのだ。もちろん、遺産相続まで考えれば意味はあるのだが、現在の遺産相続は80歳を過ぎた親から、60歳を過ぎた子供に相続されるようなもので気の遠くなる話である。
本文にある通り、財産分与は結婚後につくった共有財産を2等分することです。そのため、結婚相手の家が持っている土地は、財産分与の対象となりません。対象となるには、親が死ぬのを待つことになりますから、相当先の話です。
また、日本の場合、資産のほとんどは土地です。(世界的に見ても地価が高いため)そして、土地の運用利回りは、大して高くありません。1億円相当の土地を持っていても、年間100万ほどの利益でしょう。下手すれば、5億や10億の土地を持っているのに、なにも運用できていないという場合もあります。
そうした場合、資産家であることは間違いないですが、普通に勤め人として働くことになります。そのため、莫大な婚姻費用が発生することもありません。
つまり、資産家と結婚したとしても、婚姻費用や財産分与が高くなるとは限らないのです。むしろ、成り上がりのように一代で財を築くような男を見極めて、結婚するのがもっともリターンが大きくなります。
もちろん、お金のために結婚するわけでもないでしょう。そして、離婚しなければ、婚姻費用も財産分与も発生しません。そのため、本書の知識を使う機会のない人生にこしたことはありません。ただ、保険と同じで、人生最大のリスクに対応するために、とても勉強になる本でした。