「ヤフーの1on1」で人材教育の方法がわかった!

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ヤフーの1on1

1on1をやっていますか??

1on1は、部下の育成を加速させる秘策です。信頼関係で結ばれ、自主的に動く部下を育てるための1on1を紹介します。


ヤフーの1on1

初版:2017年03月24日

出版社:ダイヤモンド

著者:本間 浩輔

1on1とは、なにか?

定期的に上司と部下との間で行う1対1の対話のことです。ただし、よくある「面談」とは異なります。

1on1とは簡単に言えば、”わざわざ”定期的に上司と部下との間で行う1対1の対話のことです。
このように説明すると多くのビジネスパーソンは、「面談」を想像されるのではないかと思います。目標や成果を確認する面談、報告や相談の面談など、職場では多くの面談があるからです。しかし ヤフーで行っている1on1は、皆さんが想像された面談とはおそらく少し違います。本書で詳しく述べますが、ヤフーは人材育成を効果的に行うために、1on1を行います。上司はそこで部下の進捗を確認し、問題解決をサポートし、最終的にはその部下の目標達成と成長の支援を行います。
ですから、ヤフーの1on1は、言わば部下のために行う面談です。上司のための報告でも、連絡でも、相談でもありません。

つまり、1on1は部下のための上司と対話する時間です。そして、本書では週に1回15~30分を目安に、1人1人の部下と行うことを推奨しています。

こう書くと、そんな面倒なことが必要なのか?と驚く人もいるかもしれません。しかし、必要なのです。そして、一度始めたら、やめられなくなります。

なぜなら、こんなにも効果があるのか?と驚くことになるからです。1on1を知らずに過ごしてきた期間を後悔することになるでしょう。

1on1の2つの目的とは?

ドーナツ

1on1には、2つの目的があります。経験学習とコミュニケーションです。

まず、経験学習について説明します。

経験学習とは、経験から学ばせる人材教育の方法です。しかし、ただ経験を積み重ねていくだけでは、実は効果がありません。

経験学習とは、文字通り経験から学ぶことに重きを置く人材育成の方法で、職場での経験を学びに変えて、次の仕事経験に活かしていくという考え方です。
「7対2対1」の理論というものがあります。これは、人の成長を決める要素の比率と言われていて、7割は「仕事経験」から学ぶ割合、2割は「他者から学ぶ」割合、そして残り1割は「研修や書籍から学ぶ」ことを示しています。
理論に頼らなくても、仕事経験が重要であるということに違和感を感じる方は少ないでしょう。しかし、単に経験を重ねるだけで、学びが深まるかというと、それほど単純ではない。経験をするけれど、同じような失敗や過ちを犯し続ける人はどこにでもいるのではないでしょうか。すなわち、経験学習を促進するためには、経験をすることだけでなく、経験を学習に変換するアクション(振り返り)が必要で、それが1on1です。

経験をし、振り返りをします。そして、次にどう活かすかという学びを考えます。そうすることで、1回の経験が抽象化されて、別のケースにも適用できる学びに変換されます

これが経験学習です。1on1では、このプロセスをサポートするのです。

そして、1on1の結果、部下がこの経験学習の効果を感じたら、驚くべきことが起きます。1on1を待たずに、一人で振り返りをして、学びを考えるようになるのです。

そうすると、上司の手を離れて、主体的に考えて成長していきます。自転車も補助輪がなければ、乗れるようにはなれません。経験学習も同じです。最初は上司が補助輪となって、サポートしてください。これが1on1の1つ目の目的「経験学習」です。

次は、コミュニケーションです。

一方で、1on1は、業務として、定期的かつ対話に集中できる環境で、コミュニケーションを行います。話すべきことを、集中できる環境で話すことができる。これがポイントです。これまで「あの上司は忙しくて自分の個人的な相談をするのは気が引ける」と思っていた部下も、部下のことを知りたいと思っていた上司も気兼ねなく1on1をすることができます。

多くの部下を抱える人なら、1人や2人は苦手な部下もいるでしょう。逆に部下の側から見れば、上司が苦手という人も多いでしょう。

そのため、意識的にコミュニケーションをとる制度がないと、どんどんコミュニケーション量は減っていきます。

コミュニケーションをとりたい上司と、話を聞いてほしい部下。お互いの希望を叶えるのが 1on1ということになります。
とくに、「気の合わない苦手な部下」や「苦手な上司」とのギャップを埋めるのに1on1は効果的です。苦手な人ほどコミュニケーションを密にしていかなくてはいけない。そう頭ではわかっていても、気の合わない人とのコミュニケーションは避けたくなるのが人間です。
だからこそ、1on1という「制度」を活用すべきでしょう。「制度なのだから仕方ない」と、1on1で部下と向き合うことを、仕事の一環として割り切ってとられざるをえないからです。

そして、人は頻繁に接触するものに好感を抱くようになっています。そのため、苦手な上司・苦手な部下でも、1on1を繰り返していると、苦手意識も軽減されてきます。

お互いのことをよく知ると、信頼関係ができてきます。上司との信頼関係ができれば、部下は高いモチベーションで働くようになります。高いモチベーションで働いている部下を見て、上司はさらに信頼を置くようになります。そうすると、期待に応えようと部下はさらに頑張ります。

こうして、良いスパイラルに入っていくことができます。その基礎となるのがコミュニケーションです。これが1on1の2つ目の目的です。

1on1を成功させる4つのポイント

  • 1on1は部下のための時間
  • 上司はアクティブリスニングを行う
  • 部下に答えを与えない
  • 正しいフィードバックを行う

この4つが1on1を成功させるための4つのポイントです。1つずつ、解説します。

イノベーション

1on1は部下のための時間

1on1は上司が部下に伝えたいことを言う場ではありません。逆です。部下が上司に伝えたいことを言う場です。この意識が十分に浸透していないと、1on1は成功しません。

「今日は何を話そうか」という切り出しは、ヤフーの1on1の考え方を表す象徴的な一言です。この切り出しの要諦は、部下がテーマを決めることです。なぜなら、1on1は部下のために行うものであり、上司が聞きたいことを聞く場ではないからです。
この「1on1は部下のために行う」を上司が理解できるかどうかが、1on1の導入の成否を決定します。感覚的に言うと、管理職の9割はこのことを理解できません。1on1導入事例の失敗の多くは、上司が1on1をわかったつもりでも、実際には、上司が伝えたいことを伝える場になってしまっているというパターンです。ここでボタンを掛け違えると、対話スキルのトレーニングをどれだけやっても効果は期待できません。

立場が上の場合、ついつい話してしまいがちです。注意してください。

上司はアクティブリスニングを行う

PCでメールチェックをしながら、部下の話を聞く

こんな姿勢で1on1に臨んだら、最悪です。PCは閉じ、メモを準備して、アクティブリスニングを心がけてください。

聞き上手の共通点。それが高等技術というよりも、うなづきや相槌、そして体の向きや姿勢といった基本的な要素であると思います。1on1でも同じことが言えます。質問やフィードバックなど、積極的な働きかけをしなくても、部下が話しやすいような雰囲気を作ることができる人はいます。そのような上司と1on1をすると、部下はいつの間にか、思ってもいないことを話すようになり、上司からヒントをもらわなくても、話しながら自分で答えを出したり、納得したりして満足して1on1を終えていく。つまり、相手に安心感を与える動作を駆使することによって、話しやすい雰囲気や、上司と部下との信頼関係を構築することができるのだと思います。

また、アクティブリスニングには「間」も大切です。

私は、社内の研修において「上司が投げかけた質問に部下がすぐに答えられないときは、『部下が脳みそに汗をかいて考えている』ときだから、大切な時間だよ」と話すことがあります。そういうときには、答え=言語化を急かしてはいけません。コーチングやカウンセリングでは「沈黙を大切にする」という言い方をしますが、基本的には同じことです。

質問に回答が返ってこないと、イライラしたり、すぐに別の質問に切り替えたりする人も多いと思います。しかし、そこはグッと我慢して回答を待ちましょう。そうすることで、部下が成長していきます。

部下に答えを与えない

部下が規則や知識的なことで困っている場合は、答えを教えてください。しかし、思考が必要なことで困っている場合は、答えを与えないようにします。なぜなら、その答えを考えさせることが人材教育だからです。

1on1は、部下の「行動の質」を向上させ成果を上げるために行うものであり、そのために「部下の行動」→「1on1での振り返り」→「行動の改善」というサイクルを繰り返しています・したがって、次の行動に関する質問はとても大切です。
ヤフーの1on1では、上司が部下に代わって「これが問題だ」「それはこうやって解決すべきだ」などを明確な答えで示さないことがほとんどです。なぜなら、明確な答えを示すことが部下の成長の機会を奪い、部下が自ら考えて、改善し、次の行動へ結びつけることを阻害することになるからです。
上司としては、「以前よく似た事例に対処したことがある」とか「なぜ、この程度の問題で悩んでいるのか理解できない」などの理由から、早急に答えを示したくなる誘惑に駆られるかもしれません。しかし、それをやってしまうと、部下は自ら考える能力が育めなくなってしまいます。近年、指示待ちの社員が多い、という話を聞きますが、上司が問いだけでなく答えも出し続ければ、部下が考えられなくなり、指示待ちになるのは当たり前です。コーチングで上司を行うことは、部下に答えを示すことではなく、部下が自力で答えを見つけるためのサポートです。

思考をせずに上司から答えを与えられ続けると、部下は前例主義になります。なぜなら、上司が経験した過去の事例に従うばかりだからです。

そうすると、自分の頭で考えたり、自主的に動いたりすることができなくなります。リーダーに成長する可能性があったのに、前例主義の指示待ち人間に育ってしまったら、とてももったいないです。そうした損害も、1on1であれば防ぐことができます。

正しいフィードバックを行う

上記でコーチングの事例を紹介しましたが、フィードバックも人材教育の有効な手法です。

一方で、ヤフーの1on1に限定すると、目標管理してるのにフィードバックとは異なる部分にフィードバックが使われています。その一つは、上司が部下に期待する仕事の水準と、部下がもたらした成果との差を示すもの。もう一つは、一緒に働く周囲にとって、対象者(部下)が、どのように見えているかを返すものです。

実際に1on1をしてみると、不思議なことが起きます。部下の話を聞き終わると、部下から「もっと、改善した方がいいところありますか?」と質問してきてくれます。

上司から見ると、部下は同じ失敗を繰り返しているように見えるものです。同じレベルで何年も留まっているように見えます。同じことを何度も言ってるのに、なんで成長しないんだろう?部下を見て、こう感じていない上司はいないと思います。

それが部下のほうから、アドバイスを求めてくるのです。このとき、わたしはフィードバックをするようにしています。

もちろん、その場で考えても十分なフィードバックはできません。そのため、1on1の前にフィードバックを考えておきます。

ただし、注意があります。事前にフィードバックを考えてしまうと、1on1が始まるなり、早々にフィードバックをしたくなります。でも、それはNGです。必ず部下の話を聞き終わって、部下がアドバイスを聞く姿勢になってから、フィードバックを行います。

猫

はい、ということで1on1を成功させる4つのポイントを紹介しました。

「1on1は部下のための時間」「上司はアクティブリスニングを行う」「部下に答えを与えない」「正しいフィードバックを行う」この4つのポイントを心がけて、ぜひ実践してみてください。

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