「凡人の強み」野村克也が教える凡人が成功する方法

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凡人の強み

なぜ、伸びる人と伸びない人がいるのか?

人間の本当の勝負は「実は自分にはたいした素質があるわけではない」と気づいたところから始まるといいます。そのことに、いち早く気づき、苦労を重ねた人は伸び、いつまでも素質に頼ってる人は伸びません。

本書でわかった凡人が成功する2つの方法を紹介します。

凡人の強み

初版:2016年03月01日

出版社:KKベストセラーズ

著者:野村克也

なぜ、伸びる人と伸びない人がいるのか?

毎年、何人の新人選手がプロ野球界に入ってくるか、ご存知ですか?

だいたい100人の新人選手が、毎年誕生しています。プロ野球選手とは、800万人の野球人口の頂点800人の人たちのことです。しかしながら、毎年100人の新人選手が誕生するため、押し出される形で100人の選手が解雇されています。頂点を極めた1/10,000の選手であっても、下位12.5%は毎年クビなのです。

こんなに厳しい世界のプロ野球界で、とても不思議なことが起きます。

それは、メディアを賑わす大型新人が必ず成功するわけではなく、逆に、まったく注目されていなかった新人でも大成功する場合があるということです。

毎年、プロ野球界にはたくさんの新人選手が入ってくる。
例年同じ光景が繰り返されるのだが、ペナントレースが始まる前からスポーツ紙の一面を何度も賑わせる新人もいれば、マスコミやファンからほとんど注目されることがないまま、プロ野球人生をスタートさせる新人もいる。
プロ野球の世界が面白いのは、5年後、あるいは10年後には、両者の立ち位置が完全に逆転しているケースも珍しくないということだ。

ただし、これはプロ野球界だけの話ではありません。実社会でも起きています。

ただし、こうしたことはプロ野球に限った話ではない。どんな世界でも若くして才覚を発揮し将来を嘱望された人間が、必ずしもその後の人生で成功を収められるとは限らない。その逆もまた然りである。
寓話の「ウサギとカメ」のように、カメがいつのまにかウサギに追いつき、気がつけばウサギを追い抜いているということは、実社会でもしばしば起こり得ることである。だから人生は面白く奥深いのだ。

映画「ガタカ」でも描かれている通り、遺伝的な才能は存在しています。そして、才能を授かったウサギのほうが有利であることは間違いありません。

しかし、才能のないカメがウサギを追い抜くことは、プロ野球界でも実社会でも珍しくありません。なぜ、才能がなくても伸びる人と、才能がありながら伸びない人がいるのでしょうか?

答えは「苦労」の差です。

才能の限界までたどりついたら、そこから先にはなかなか進めません。そこで、現状を打開して1歩先に進むことを「苦労」と野村克也氏は言っています。

苦労は誰だって嫌なものである。
本物の苦労を味わった人間は、「どうにかこの状態から抜け出したい」と本気で願うものだ。すると、苦労から抜け出すための方法を一生懸命に考える、「思考」という習慣が育まれていく。
野球で言えば自分が一軍入りをしてレギュラーの座をつかむためには、ライバルと比べて何が足りなくて何が優っているのか、その差を埋めるためにはどうすればいいのかを必死で研究するようになる。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というやつである。
すると今度は次第に、自分や周りの人間が置かれている状況や心理、変化などを敏感に察知する「感性」も磨かれていく。
そしてさらには、私が当時タブーとされていた筋力トレーニングに取り組んだように、苦労から抜け出すために新しいことに果敢にチャレンジする「勇気」も身についていく。
つまり苦労とまともに向き合った人間は、「思考」「感性」「勇気」を備えることができるようになるわけだ。

苦労を経験することで、思考・感性・勇気を備えることができます。これが、伸びる人と伸びない人との差です。

そして、どんなに才能に恵まれた人も、その才能には限界があります。なぜなら、人は齢をとるからです。そのため、人生のどこかで苦労をする必要があるといいます。

つまりどんな選手でも、いずれは「苦労」に直面しなくてはならないときがくるわけだ。人生とはよくできたもので、若い時に苦労した人は歳をとってから楽ができるが、若いときに楽をすると歳をとってから苦労することになるのである。
大切なのは苦労に直面したときに、「思考」や「感性」を働かせてその苦労を乗り越えられるかどうかである。そして今までの自分とは違う自分になろうとする「勇気」が持てるかどうかである。「これが自分の限界なんだから、もうこれでいいんだ」と、簡単に諦めてしまったら、その時点でその選手の野球人生は終わりである。苦労から逃げずに「思考」「感性」「勇気」をギリギリまで働かせることができた選手だけが、長年にわたって超一流選手であり続けることができるわけだ。

なぜ、報われない努力があるのか?

猫

成功するには努力が必要です。そして、努力には量と質があります。

もちろん、成功するために、努力の量をこなすことは大前提です。しかし、どんなに量をこなしていても、質を高めないと、努力は報われません。

努力においては、「どれだけ努力をしたか」という徹底度も大事だが、「正しい努力ができているか」という努力の中身も重要である。
たとえば連日のように早出特打をおこない、試合後も素振りを欠かさない選手がいる。しかし、なかなか結果が残せない場合も少なくない。なぜか。練習を行う目的が「ただバットを振ること」だけになってしまっているからだ。
自分が「どんなバッターになりたくて、そのためにどんな練習が必要なのか」をしっかり定めた上で臨まないと、どれほど努力を重ねたとしても間違った努力になってしまうのである。明確な目的意識を持って、物事に取り組むことが大切になるのだ。

毎日、素振りを欠かさない努力の人も、ただバットを振っているだけでは意味がありません。結果としては腕が太くなるという筋トレにしかならないのです。

そうではなく、質を高めて正しい努力をする必要があります。これこそ、凡人が成功する方法です。凡人が成功するために必要な正しい努力には2つの要素が必要です。それは、①現在地の把握と②目的地の設定です。

考える

まず、①現在地の把握とは、どういうことでしょう?

己を知るためには、自分の周りを見渡してみるのが効果的である。高校時代には、「県下ナンバー1の速球投手」として知られたようなピッチャーでも、プロの世界に入ると並のスピードボールしか投げられないピッチャーになったりする。プロでは150キロ台の速球が投げられるピッチャーなど、ざらにいるからだ。
私たちは絶対評価でなく相対評価のなかで生きているだから。周りの人間と比べながら、己の実力を正確に評価し、そのなかで「自分を活かせる道」を見つけ出すことが大切なのだ。

現在地の把握とは、現時点での自分の実力を知ることです。そして、才能の多寡を理解することです。

これは非常に辛い作業です。なかなか受け入れられないという人も多いでしょう。しかし、自分の現在地を把握しないと、その後のすべての努力がちぐはぐになってしまいます。

次に、②目的地の設定です。

私は「キャッチャーとは?」「評論家とは?」といったように、「とは?」と己に問いかけることが大切だと考える。「とは?」と問いかけることで、自分が目指す「あるべき姿」が明らかになる。その「あるべき姿」に向けて努力を続けることで。自己を高めることができるからだ。「あるべき姿」を持たないままにいくら努力を重ねても、その努力は空回りに終わるだけだ。目的地が曖昧なままに船を出航させるのと同じである。

とは?を問うことで、目的地を設定することができます。

実際に自分の仕事などに置き換えてみると分かりますが、意外と答えに困ります。営業をされている方なら、営業とは?を考えたり、SEの方なら、SEとは?を突き詰めたりするのです。もちろん、自分とは?を考えることも大切です。

こうして現在地を把握し、目的地を設定すれば、正しい努力を行う準備が整います。あとは質の高い努力を量こなしていけばいいのです。

ただし、天から授かった才能には限界はあるが、人間の思考力には限界がないと私は思っている。130キロ台のボールしか投げられないのであれば、どうすればその速球で相手打者を打ちとれるか、「思考」の限界まで考え抜くことが大切である。そして130キロ台で勝負できるピッチャーと、「勇気」を持って今の自分を変えていけばいいのだ。事実、武田勝はチェンジアップとシュートを身につけたことによって、快速球は投げられなくてもプロで通用するピッチャーへと変貌を遂げていった。
こうした変貌は、ある意味、「天から恵まれた才能を授からなかった人間」だからこその「特権」であると言える。凡人は素質だけで勝負はできない。必ず壁にぶち当たる。苦労する。だからこそ己が生きる道を必死で考え、変わることができるのだ。
人間の本当の勝負は、「実は自分にはたいした素質があるわけではない」と気づいたところから始まるのである。

凡人が成功する方法は、才能の限界の先に進むことです。その苦労を味わうことで、思考し、感性が磨かれ、タブーに挑戦する勇気を持てます。

その苦労を乗り越えるには、正しい努力が必要です。量をこなすことは大前提ですが、高い質の努力を行わなくてはなりません。質を高めるために、先ほどの思考・感性・勇気が欠かせないのです。

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