【後編】「お金2.0」なぜ、これからはNPOの時代なのか?

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お金2.0

これからNPOが台頭する時代となります。

なぜなら、資本主義が終わり、価値主義の時代となるからです。そのため、資本でないものもお金に変換することが可能になり、今までより広く価値が評価されるようになります。お金2.0でわかった資本主義から価値主義への変化を紹介します。


お金2.0

初版:2017年11月30日

出版社:幻冬社

著者:佐藤航陽

なぜ、これからはNPOの時代なのか?

ある京都大学の医学部生が、驚愕の選択をしていました。マッキンゼーやP&G、J&Jから内定をもらった上で、NPOに就職したのです。

なんで??と思いませんか?京大の医学部だったら、そのまま医者になっても、いい人生が待っていそうです。医者が嫌だったとしても、マッキンゼーやP&Gに就職でも、十分すごいです。それにもかかわらず、NPOを選択したわけです。

いままでの資本主義的な観点から見ると、非常に非合理的な判断です。しかし、これからくる価値主義から見ると、実はこうした判断も合理的なのです。

良い大学を出た一流企業にも就職できるエリートがその道を選ばずにNPOや社会起業家などに専念するのは、資本主義的には非合理的な選択に見えますが、価値主義的には合理的な意思決定とみなすことができます。

そして、最初に結論を書いてしまいますが、これからは政治と経済の境界線がなくなると本書では書かれています。

価値は非常に高いけど、資本主義的に合理的ではない事業が、いままでたくさんありました。そうしたものは、公共事業として国(政治)が担当していました。しかし、価値主義の時代になれば、そうした公共事業も経済的に合理的な事業となります。なので、政府ではなく、民間で担えるようになるのです。

NPOは、”お金を度外視した志の高い人たちが取り組むもの”ではなくなりました。こうした資本主義から価値主義への変化を紹介します。

なぜ、価値主義の時代なのか?

資本主義から価値主義への変化には、2つの要因があります。

1.インターネットの出現
2.仮想通貨の出現

この2つによって、

1.お金を介さずに、価値と価値を直接交換できるようになった
2.いままで価値を測定できなかったものでも、価値を測定できるようになった

という変化が起きています。具体的な例を紹介しましょう。

例えば、貯金ゼロ円だけど多くの人に注目されていてツイッターのフォロワーが100万人以上いる人が、何か事業をやりたいと考えたとします。すぐにタイムライン上で仲間を募り、クラウドファンディングを通じて資金を募り、わからないことがあればフォロワーに知恵を借ります。
この人は、”他人からの注目”という貨幣換算が難しい価値を、好きなタイミングで人脈・金・情報という別の価値に転換することができます。1億円の貯金があることと100万人のフォロワーがいることのどちらが良いかは人によって答えが違うと思いますが、ネットの普及で自分の価値をどんな方法で保存しておくか選べるようになってきています。

この例では、フォロワー100万人という価値を、

①仲間
②資金(クラウドファンディング経由)
③知恵

の3つに交換しています。そして、ポイントは①仲間も②知恵も、お金を仲介せずに得ているところです。今までなら、人材会社にお金を払ったり、コンサル会社にお金を払ったりする必要がありました。ところが、ツイッターというサービスのおかげで、ダイレクトに価値と価値を交換できているのです。

そして、このフォロワー100万人というのは、いままでお金で評価するのは難しかったものです。ところが、さまざま仮想通貨(トークン)のおかげで、価値を可視化できるようになっています。

トークンも、この金塊と同様に、現実世界の何かと紐付けることで、それ自体の価値を可視化することができます。商品や不動産のような目に見えて扱えるものの価値を可視化することも流通させることを難しくありませんが、従来は目には見えない「概念」の価値を可視化して流通させることは非常に手間でした。
例えば、影響力・信用・好意のような感情や、時間、サービスの機能、デジタルコンテンツ、文字などの社会的な概念は、従来の金融や経済では可視化することも算定することを難しく、これらが売上や利益に変わったタイミングで初めて価値と認識することができました。売買したり、市場に流通させることも非常に困難でした。
こういった曖昧な概念もトークンを活用すれば、好きに紐付けて流通させることで価値を可視化することができます。従来は証券業界がこういったことを専門にしていましたが、ネット化が進み金融の枠組みだけでは捉えることができなくなりつつあります。

お金

そして、こう続きます。

つまり、今起きていることはお金が価値を媒体する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつあるということです。価値を保存・交換・測定する手段は私たちがいつも使っているお金である必要はなくなっています。
価値をやり取りする手段が現在の国が発行する通貨以外でも可能になると、ユーザーは自分にとって最も便利な方法を選んで価値のやり取りをするようになります。それが国の発行する通貨なのか、企業が発行するポイントなのか、ビットコインのような仮想通貨なのか、はたまた価値の直接交換なのかは人によって違うでしょう。
手段の多様化により人々が注力するポイントが「お金」という手段から、その根源である「価値」に変わることは予想できます。価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなタイミングで他の価値と交換できるようになっていきます。「価値」とは商品のようなものであり、「お金」とは商品の販売チャネルを1つみたいなものです。

つまり、いままではお金で価値を可視化できる「資本」が、大切な存在でした。なぜなら、資本でないとお金に変換できず、他の価値との交換ができなかったからです。

しかし、インターネットと仮想通貨のおかげで、お金で可視化できない価値であっても、①直接交換できたり、②価値を可視化できたりする時代となりました。そのため、資本だけでなく、もっと幅広く価値全般が大切になる時代となってきているのです。これが価値主義の時代です。

価値主義とは、なにか?

笑顔

資本だけでなく、価値全般が大切な価値主義の時代がやってきます。

先述の例を見てもわかるように、資本主義上のお金というものが現実世界の価値を正しく認識・評価できなくなっています。今後は、可視化された「資本」ではなく、お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくことが予想できます。
私はこの流れを「資本主義」ではなく「価値主義」と呼んでいます。2つは似ているようで別のルールです。資本主義場で意味がないと思われる行為も、価値主義上では意味がある行為になるということが起きます。

そして、こう続きます。

価値主義ではその名の通り価値を最大化していくことが最も重要です。価値とは非常に曖昧な言葉ですが、経済的には人間の欲望を満たす実世界での実用性(使用価値・利用価値)を指す場合や、倫理的・精神的な観点から真・善・美・愛など人間社会の存続にプラスになるような概念を指す場合もあります。

それでは、「価値」には、どんなものがあるのでしょうか?本書では、3つの価値が紹介されていました。

  • 有用性といての価値
  • 内面的な価値
  • 社会的な価値

「有用性としての価値」は資本と言い換えることができるものです。なので、いままでの資本主義で重視されていたものです。そして、価値主義の時代になると、それに加えて、「内面的な価値」と「社会的な価値」も重視されるようになります。それぞれの価値が、どういうものか、本書から引用して説明します。

有用性といての価値

これは最も馴染みが深く資本主義がメインに扱う価値です。経済、経営、金融、会計などで価値という言葉が出たら、この有用性・有益性・実用性としての価値を指しています。一言で言えば、「役に立つか?」という観点から考えた価値です。現実世界で使用できる、利用できる、儲かる、といった実世界での「リターン」を前提にした価値です。

内面的な価値

実生活に役に立つか?という観点とは別に、個人の内面的な感情と結びつけても価値という言葉は使われます。愛情・共感・興奮・好意・信頼など、実生活に役に立つわけではないけれど、その個人の内面としてポジティブな効果を及ぼす時に、価値があるという表現は使います。

社会的な価値

資本主義は個人の利益を追求していくことが全体の利益につながるという考え方です。一方で、慈善活動やNPOのように、個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動も私たちは価値があると表現します。金融や経営の観点から考えると、社会全体の持続性を高めるような行為はただのコストに過ぎず、価値があるとは言えません。ただ、砂漠に木を植える人たちや、発展途上国に学校を作ったりする人の行動に価値を感じる人は多いと思います。

最初の章でも書いていますが、いままで「内面的な価値」や「社会的な価値」は国やNPOが、利益度外視で担当してきた分野です。しかし、これからは「有用性としての価値」と同等の重みで、追及されるものとなります。そのため、政治と経済の垣根がなくなっていく時代が来ます。これが資本主義から価値主義への変化の時代です。

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