「経営の教科書」でわかった経営の原理原則とは?

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経営の教科書

経営とは、なんでしょうか?

経営には、業界やビジネスモデルを超えた原理原則があります。経営とは人を通じて物事を達成する技です。原理原則から見た経営について、紹介します。


経営の教科書

初版:2009年12月11日

出版社:ダイヤモンド社

著者:新将命

経営には原理原則がある

経営とは、なんでしょうか?経営とは、人を通じて物事を達成する技です。

そして、経営には原理原則があるといいます。不易流行という言葉があるように、80%を占める原理原則の部分は時代や業界を超えて不変です。絶えず変化しているのは20%の部分です。

これはひとえに長年にわたり経営にたずさわってきた経験のおかげだが、いまでは企業トップに10分ほど話を聞き、社内をざっと拝見すれば、「この会社は伸びる」「ちょっと危ない」「かなり危ない」といったことがだいたい読めるようになった。
なぜか。それは、業種業界に関係なく、企業経営の根幹の八〇パーセントは、ほとんどどの会社も同じだからだ。残る二〇パーセントは、変動要素である商品や流通や商習慣の違いであり、これは半年から一年も勉強すれば習得できる類のものである。だからこそ、一八〇度違う異業種からの社長就任も、まったく問題はないのである。重要なのは「不易」である根幹の八〇パーセント、すなわち「経営の原理原則」を身につけることなのだ。

だから、企業を経営するときに、まず重要なのは「経営の原理原則」を身につけることとなります。

経営とは何か?

イノベーション

経営とは、人を通じて物事をなす技であると紹介しました。そして、別の角度から見ると、筆者はこうも述べています。

経営は「いまどこだ」「どうなりたい」「どうやる」「どうなった」

つまり、経営とは試行錯誤のプロセスだというのです。

どうなりたいか(理念)を定め、いまどこだ(現状)を把握して、どうやるか(戦略・戦術)を決めて、実行します。その結果、どうなったか(結果)を把握しながら、理念に近づくように戦略・戦術を練って、再び実行します。

このサイクルを繰り返していくことが経営なのです。ここで、「どうなりたい(理念)」と「どうやる(戦略・戦術)」の部分を深掘りして、紹介していきます。

どうなりたい(理念)

経営に限らず、リーダーシップを発揮するすべてのシーンで理念は重要です。

それは多くの経営者や学者、あらゆる人が述べています。ここに異論の余地はないようにも感じます。そして、理念はキレイゴトのために掲げるわけではありません。実際に理念のある企業のほうが、4倍も利益を出しているというのです。

日本で、経常利益率の増加および経常利益率と経営理念の有無について、二〇年間にわたって調査が行われたことがある。その結果わかったのは、経営理念のない企業の経常利益額は二〇年間で三・六倍にしかならなかったのに対し、理念のある企業は七・八倍になっていたのである。また経常利益率も、理念のない企業の二・一六パーセントに対して理念のある企業は八・〇七パーセントと、実に約四倍の差を生んでいるのだ。
端的にいうと、経営理念づくりとその浸透は、結果として儲けにつながるのである。なぜか。人は、大きなことを信じたときに大きな仕事をする、という生き物だからだ。

理念のある会社のほうが、社員は大きな仕事をすることができるので、結果として大きな利益をあげることが可能です。なので、経営の第一歩は企業の存在意義ともいえる理念を定めることです。そして、その理念からブレず、社員とともに理念を目指すことです。

どうやる(戦略・戦術)

理念が定まったら、次はどうやるか(戦略・戦術)を考えるフェーズです。

戦略や戦術に関しては、多くの書籍が出ており、日々テクノロジーの進歩とともに変化している部分でもあります。しかし、筆者はそうした流行ではなく、不易の「どうやる」が存在しているといいます。

それは「人として正しい」やり方を採用するということです。

社長に就任してしばらく経ったころ、アメリカ総本社の会長が日本にやってきたときのことだ。相手は、世界中に11万人の従業員を擁するグローバル企業のトップである。経営というものに大いに関心があった新任社長の私は、会議の質応答の時間に尋ねてみた。
「あなたが経営者にとって最も重要だと思う資質は、何でしょうか」
すると入会長は、すかさずこう答えた。
「ひとつは、平均を上回る知性。もうひとつは、極度に高い倫理性である」
いわゆる頭のよさに関していえば、天才である必要もなければ秀才である必要もない、ほどほどでもかまわない。平均を上回る程度でよい。しかし倫理性は違う。経営者であれば、人より並外れて高い倫理性を持たねばならないー会長はそう答えたのである。

社長の仕事とは、何か?

考える

もちろん、社長の仕事は経営することです。そして、経営とは「いまどこだ」「どうなりたい」「どうやる」「どうなった」を把握しながら、試行錯誤をしていくことです。その中でも、もっとも重圧のかかる仕事が「決断・断行」だといいます。この「決断・断行」は、一般的な「決定・実行」とはまったく異なる行為です。

決定:十分な情報やデータを精査した上での判断
実行:決定を行動に移すこと
決断:不足した情報やデータの中での判断
断行:決断を行動に移すこと

そして、このように不足した情報やデータの中で判断(決断)し、決断を実行(断行)するには、知識や見識だけでは不十分で、胆識が必要だといいます。

世の中には「知識人」や「見識者」を受け入れる場所は随所にあるが、こと経営者となれば話は別だ。組織のトップとして結果責任を担いながら人を率いるならば、「知識」や「見識」を一段越えた「胆識」が必要になる。

そして、こう続きます。

見議(知識+自分の考え方)+決断力+断行力=胆識
「ものを知っていて(知識)、それに自分の考え方が加えられて(見識)、なおかつ、リスクを恐れずに『決断』し、決断を『断行』に移すことのできる能力」。これが、陽明学に出てくる「胆識」である。

そのため、社長には非常に大きな重圧がのしかかるのです。

基本的には社長は強靭なほうがいい。二日くらい徹夜しても体がもつくらいの肉体はほしい。そしてそれ以上に必要なのが、精神的な強さである。
社長と副社長の距離は、副社長と運転手の距離よりも遠いものだ。重要なことはすべて最終的には自分一人で決断しなければならないという責任と重圧。自分は正しい方向へと会社の軌道を描けているだろうかという心配。信じていた部下にいつ裏切られるかもしれないという不安。顧客に見放され、銀行に見放され、資金が途絶えるという恐怖……。これは、実際に経営者の立場に立った者でなければわからない。

社長と副社長の距離は、副社長と運転手の距離よりも遠い…

シビれる言葉です。「不恰好経営」や「渋谷で働く社長の告白」など、どんな社長が書いた本を読んでも伝わってくるのが、この重い重い重圧です。この重圧を受け止めることこそ、社長の仕事なのだと改めて感じます。

家族経営から企業経営に進化するには?

日本の企業の98%は家族経営です。本当の家族でなくても、中小・零細という規模で、売上は10億以下です。

では、この98%(家族経営)と2%(企業経営)の差は、なにで生まれるのでしょうか?どうすれば、家族経営を抜け出し、企業経営に進化することができるのでしょうか?

筆者は、答えは「人を育てること」にあるといいます。

日本には約二五〇万の企業があるといわれる。その九八パーセント程度を占めるのがいわゆる中小企業だが、これらの企業のほとんどが、ある程度の規模までいくとパタッと成長の波が止まり、踊り場からなかなか抜け出せなくなってしまう。
企業の成長が止まる原因は何か。最大の原因のひとつは、社長が社員に「任せる」ことができていないからだと考えている。会社は経営者の器以上に大きくはならない、などとよくいわれるが、器のなかにはこの「任せる能力」が含まれているのだ。
一人の人間にできることには限りがある。頭も体も一つしかなく、たとえ一睡もしなかったとしても一日は二四時間しかない。その制限のなかで企業の殻を一つまた一つと破りながら脱皮して成長するには、結局、任せることが必要になってくるのである。アメリカにはこんな言葉がある。
経営とは、人を通じて物事を達成する技なり
経営とは、平凡な人に非凡な仕事をさせる技なり

実際に、松下幸之助氏や日本を代表するトヨタ自動車なども、「人を育てること」の重要性を説いています。

日本においても、すぐれた企業は人を育ててきた。松下幸之助氏は「我が社は人をつくります。それからモノをつくります」といっているし、トヨタ自動車は「モノづくりの前に、人づくり」がモットーになっている。経営という言葉の語源は、仏教の言葉で「人を育てる」という意味である。企業の優位性の源は「人」であるということを、これらの言葉は教えてくれる。

つまり、一人のカリスマ社長が引っ張っていける限界は、10億前後にあるということです。そのため、家族経営から企業経営に進化するには、人を育てることが重要なのです。

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