
人は、なにをコミュニティに求めているのか?
好きなものを好きと言っていい安心と安全です。ますます重要性の高まるコミュニティの作り方を紹介します。
WE ARE LONELY BUT NOT ALONE
初版:2018年05月09日
出版社:NewsPicks Book
著者:佐渡島 庸平
人は、なぜコミュニティを求めるのか?
それは、人が自由と安心・安全を求めているからです。そして、コミュニティに所属することで、安心・安全を満たそうとしているからです。
「安心と自由」どちらが重要か?
コミュニティについて考えるとき、この二つがキーワードになる。安心と不安、自由と義務ではなく、安心と自由だ。人間は、この二つを欲しがる。できれば、同時に。しかし、この二つは決して、同時には手に入れられなかった。安心を得ようとすると、自由が失われるし、自由を得ようとすると、安心を失う。
初めは、村社会(地域コミュニティ)があった。誰もが相手の顔と名前が一致していた。余所者が来れば、すぐに気づいたし、排除された。引っ越しも、職業の選択も自由はほとんどない、同調圧力が強い社会だった。その代わりに、圧倒的な安全があり、安心があった。
高度経済成長期に、多くの人が都市部に流れて、村社会の時代は終わった。都市には地域コミュニティが生まれず、核家族を中心とした極小コミュニティと会社コミュニティ、この二つに人は身を委ねた。村社会に比べたら、生き方の自由度は増した。しかし、安全・安心は減る。周りは知らない人ばかり。安心を確保するために、終身雇用という制度は有効だった。
以前の村社会では、自由はなかったが、安心・安全がありました。その後、人々は都市型の生活に移行し、自由を獲得しました。しかし、安心・安全を失ってしまいました。
なので、いま人々は都市型の生活で自由を確保したまま、安心・安全を得ようとしているのです。そこで、コミュニティの重要性が増しています。なぜなら、コミュニティに所属することで、人は安心・安全を得ることができるからです。
自由と安心、両方を同時に得ることは不可能なのか?
「not alone.」そんな気持ちを持たせてくれるのは、コミュニティだけだ。
今までの物理的な必然性で生まれたコミュニティではなく、インターネットの中で、「好き」を中心にしてできたコミュニティに可能性があるというのが、僕の仮説だ。インターネットの力は、自由と安心、両方をもたらしうるのではないか。
この感覚、わたしもとても共感します。わたしは”いずれ村を作りたい”ということを言っていました。お互いに干渉しない適度な距離がありつつも、近くに住んでいて、偶然に接触する機会があるような村を作りたかったのです。そして、その村の住人は、お互いに信頼関係がある人ばかりで、”守られている・繋がっている”空間を作りたいと考えていました。
まさに”not alone”な生活です。本書を読んで、わたしが求めていたものは安心・安全であったのだと理解しました。
コミュニティの作り方
では、どうすればコミュニティを作れるのでしょうか?
「宇宙兄弟」「ドラゴン桜」「君たちはどう生きるか」など、多くのヒットを手がけきた著者が、そのコミュニティ作りのポイントを2つ紹介しています。
- 好きなことをする
- ファンを育てる
それぞれ、どういう意味か解説していきます。
好きなことをする
現代のコミュニティは、以前のコミュニティと大きく異なります。
以前のコミュニティは地理的な制約がありました。そのため、同じ地域に住んでいたり、同じ会社に勤めていたりする人たちで構成されていました。ところが、現代のコミュニティに地理的な制約はありません。なぜなら、SNSが発達し、オンラインで好きなコミュニティに所属することができるようになったからです。
そのため、コミュニティを作るには、好きなこと(価値観に沿ったこと)をすることが重要です。なぜなら、価値観に共感した人がコミュニティに入ってくるからです。
モノがなかった時代は、「何を持っているかの表明」が、その人を表した。モノが溢れ、すべての価値観が許容されていく中で、「個人の価値基準そのもの」に、アイデンティティが宿る時代がやってきたのだ。
これからは、物質の所有やヒエラルキー付き組織への所属ではなく、自分は何を欲しいのか、何をいいと思うのか、それをわかりやすく表明している個人への注目が集まっていく。SNSでフォロワーを多く集めているのは、どんな価値観で生きているかがわかりやすく、ブレない人だ。
SNSで大きな影響力をもつインフルエンサーたちの書籍を見ても、そのことが伺えます。
- SNSで夢を叶える(ゆうこす)
- 「好きなことだけやって生きていく」という提案(角田陽一郎)
- 「自分」を仕事にする生き方(はあちゅう)
3人に共通しているのは、みんな自分の小さな問題を見つけて、その問題解決を必死にしている間に世間に認められたということだ。彼らの価値は、問題解決ではない、問題発見だ。ブレない価値観を持ち、「自分の好き」を大切にしている。世間の価値基準に合わせて、不自由を我慢していないから、自分が取り組む問題を発見できる人たちだ。
さらに、こう続きます。
たった100人に一人、1000人に一人でも、ネット上であれば、総数としてはかなりの数がいて、つながり合うことができる。絶対的にマイナーだと思っていた価値観が、そこまでマイナーなわけではないと知ることができると、遠慮せず自分の価値観を外に主張できるようになる場合もある。
ファンを育てる
ファンは上記のような構造になっています。コミュニティ外の人からUserになってもらい、最終的にはCommiterにまで育てていくことが大切です。
そのための第一歩は、前章で述べたように、”好きなこと”を明確にして、発信していくことです。
フォロワーを増やすことだけを意識して、流行りそうなものを投稿しても意味がない。そのようなネタアカウントについたファンは、クリエーターがやりたいことを応援してくれる人にはならないからだ。まずは、自分が得意で、考えていて楽しいこと、自分が深掘りしたいことを10個決める。それについてだけ、投稿することにするのだ。
“好きなこと”を発信していくと、User・Likerが徐々にできてきます。わたしも、先月からインスタグラムを運用し始めました。毎日、読書に関する投稿をしていますが、そうすると徐々にフォロワーは増えていきます。そして、毎回いいね!を押してくれたり、コメントをくれたりするフォロワーも増えていると感じます。UserとLikerの育成は、このような感じかなと実感しています。
そして、Likerまで育ったら、次はAccepterです。しかし、この2つ間には壁があります。ビジネス的な観点で見れば、Accepterが育ち始めると、収入が発生します。この壁の超え方はいくつもあると思いますが、著者はLINE@とメルマガという方法をオススメしています。
より参加度の高いファンになってもらうためには、有料でユーザーに一歩踏み込んでもらうか、こちらから相手のプライベート空間に入っていくかの2パターンがある。
相手のプライベート空間に入っていき、メッセージを伝える方法としては、LINE@とメルマガが有効だ。どちらも登録してもらうハードルはすごく高い。しかし、一度登録してもらえると、深さは一気に深まる。公共的なSNSだと、有名人など他のインフルエンサーと並列になるが、プライベ ートなSNSだと、家族や友人といった大切な人と並列になるからだ。
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