ファイナンス思考とは、PLとBSを意識して長期的に繁栄する意思決定をすることをいいます。
ファイナンス思考を身につけて、利益を再投資することで、レバレッジを効かせて豊かな人生を送ることができます。読書会でわかったファイナンス思考を解説していきます。
目次
開催報告:20代読書会in東京
日時:10月06日(土)09:30-12:00
参加者:10名(男性:7名、女性:3名 初参加:0名、リピーター:10名)
MVP賞
ファイナンス思考
紹介された本
- フォーカス
- 予定通り進まないプロジェクトの進め方
- 未来を語る
- 新観光立国論
- 東大読書
- 伝説の新人
- いま君に伝えたいお金の話
ファイナンス思考とは、なにか?
ファイナンス思考とは、PLとBSを意識して長期的に繁栄する意思決定をすることをいいます。
- PLとは、会計の損益計算書
- BSとは、会計の貸借対照表
のことです。用語だけをみると難しそうですが、とても簡単な概念です。
PLはProfit Lossのことです。日本語で言えば、利益と損失です。つまり、1年でどれだけ売上(収入)があったか?または費用(支出)が発生したか?ということを1つの表にまとめたものです。
一方、BSはBalance Sheetのことです。これは資産と負債です。簡単いいうと、資産とは収入を生むもののことを言い、負債とは支出を生むもののことを言います。そして、その資産と負債を1つの表にまとめたのがBSです。
「ファイナンス思考」で指摘されていますが、日本企業はPL思考に偏っており、これは大きな問題です。
なぜなら、
- PLは短期的な思考
- BSは長期的な思考
だからです。
個人の例で考えるとわかりやすいです。個人でPLを重視すると、どのような生活になるでしょうか?収入を最大化して支出を最小化すればいいのです。
たとえば、思いっきり残業するのは目の前の収入を最大化する選択でしょう。そして、将来のために本を読んだり、体を鍛えたりすれば支出が上がってしまうので、そうしたものへの支出は控えます。健康に気を使わず、カップ麺生活をすれば食費は抑えることができるでしょう。
こうして毎日終電まで働き、土日も出社して将来のための支出を一切しないというのが、極端にPLを重視した判断になると思います。この例を考えれば、PLが短期的な思考だということがわかりやすいと思います。
一方で、BSを重視すると、どのような生活になるでしょうか?
資産を増やし、負債を減らすことに注力すればいいのです。自分のスキルや知識・人脈などが収入を生むわけですから、積極的に自己投資をします。残業を断って目の前の収入を犠牲にしながら、何かの勉強に取り組むかもしれません。
また、不健康な生活は10年・20年後に仕事のパフォーマンスを下げたり、病気になって入院したりという損失を生みます。そうした負債を抱えないように、健康的な食事をしたり、睡眠の質を高めたりもするでしょう。つまり、BSを重視すると、長期的な思考になるのです。
なぜ日本企業にはファイナンス思考がないのか?
「ファイナンス思考」の中では、日本企業にはBSを重視する企業が少ないと指摘されています。
これには理由があります。それは、現在の日本のトップ企業が高度経済成長とともに大きくなってきたからです。
1950年代から80年代までの日本経済は特別な時間でした。アメリカとソ連が冷戦に突入したことで、日本はアメリカにとって一気に重要な拠点となります。
そして、
- 円が格安に固定され、輸出に有利だったこと
- 米軍の保護のもと、軍費が不要だったこと
- ベビーブーマーたちの人口ボーナス
- 朝鮮戦争の特需
こうしたことを背景に、一気に日本は経済大国になりました。そのため、日本企業にとって大事だったのは”今年はどれくらい利益が出るか?”ということだけだったのです。なぜなら、わざわざ5年後・10年後のことを考えなくても、日本経済は急速に伸びていたからです。
そのため、”今年の利益を最大化する”ということを繰り返していれば、自然と企業も成長できたのです。その結果、BSを意識せず、ファイナンス思考が備わっていないそうです。
一方で、世界を見れば、BSを重視した企業経営は多く存在しています。
たとえば、シリコンバレーでも”利益の再投資”は浸透した概念です。なので、利益が出れば、その分を資産に投資していきます。もちろん、不動産や金融資産への投資ではなく、ビジネス資産です。その会社にとってプラスとなる事業に投資するという意味です。
そのため、短期的には利益のないPLが続いても、10年で売上1000億を超える企業は多く生まれてきます。これは利益を資産に再投資することを繰り返した結果、途中からレバレッジがかかってくるので起きる現象です。
有名なのはAmazonでしょう。Amazonは創業以来、物流システムへの大規模な投資や顧客サービスへの投資(送料無料、Amazon prime)など繰り返してきました。その結果、上場しても赤字を出し続けてきました。しかし、今では売上は20兆円を超え、時価総額は100兆円を超える会社となっています。
また、日本でもファイナンス思考で成功している企業はあります。それは、ソフトバンクです。
ソフトバンクは、世間を驚かせるような投資を繰り返してきた企業です。最初はソフトフェアの卸売を行なっていました。そして、次にYahoo BBのブロードバンド事業を手がけます。一時は4000億円という巨額の赤字を出しながら、日本のインターネットを変えました。
PLを重視していれば、この4000億円の赤字なんて、とても許容できなかったでしょう。
その後、ネットバブルが崩壊して株価が100分の1になるなかで、ボーダフォンの買収に乗り出します。その金額は、なんと1兆7000億円です。取締役も全員反対したそうです。しかし、今から考えれば大正解の判断で、ソフトバンクのメイン事業となっています。最近では、米国のスプリントやTモバイルも買収し、これらも数兆円規模の投資となっています。
このようにファイナンス思考でBSを重視した判断を行うと、短期的には利益が減ったり、赤字になったりします。しかし、5年・10年で考えれば、大きなリターンが得られます。そのため、著者は企業が成長するには、ファイナンス思考が必須であると述べています。
個人もファイナンス思考の時代
ファイナンス思考を備えた企業が大成功をしていることは、すでに述べました。そして、いまは個人もファイナンス思考を身につけるべき時代となっています。
一度、おさらいすると
ファイナンス思考とは、PLとBSを意識して長期的に繁栄する意思決定をするこです。もちろん、重要なのはPLではなく、BSです。短期的な利益を最大化するのではなく、自分の資産を増やし、負債を減らすような思考が個人にも求められています。
そして、
- 資産とは、収入を増やしてくれるもの
- 負債とは、支出を増やすもの
のことをいいます。この資産と負債については「金持ち父さん貧乏父さん」が世界的ベストセラーでわかりやすいので、興味のある方は、読んでみてください。
参考:「金持ち父さん貧乏父さん」で、金持ちになりたくなった!!
一般的に、資産というと不動産やら金融資産やらをイメージしがちです。しかし、資産には2種類あります。
- 有形資産
- 無形資産
資産に有形と無形があるということは、負債にも有形と無形の2種類があります。資産を裏返せば負債なので、以下では負債側の説明は省きます。
そして、有形資産とは、財務諸表に記載されるような資産のことです。不動産、株、保険などが有形資産です。
しかし、ポイントは無形資産のほうです。なぜなら、有形資産は元手となるお金が大きくなければ、インパクトが薄いからです。
実例で説明しましょう。ある外資系企業に勤める30歳の方が、不動産投資をしているという話をしていました。その話の流れで “君も不動産を買ったほうがいい”という話になったわけですが…
その方は、マンション3室を所有しており、7500万の45年ローンを組んでいるそうです。その結果、毎月の不動産収入は3万円だそうです。7500万の資産が、月3万円、つまり年36万…。頭金が1000万とするとROIは3.6%です。
ちなみに、東京のマンションは退去してから次の入居があるまで平均2ヶ月と言われています。この2ヶ月、家賃は持ち出しになるので、1人が退去すると2ヶ月×8万(家賃)=16万の損失が出ます。
一例ですが、有形資産の投資というのは、こういうことです。外資系企業で高給だから、7500万もローンが組めるわけで、普通なら月3万の不動産収入をつくることすら難しいでしょう。なので、いきなり有形資産を考えるのではなく、最初は無形資産を考えるのがいいです。
この無形資産は、LIFE SHIFTに書かれているとおり3種類あります。
- 生産性資産
- 活力資産
- 変身資産
です。詳しくは、こちらの記事に書いていますが、簡単にこの3つの資産を説明します。
参考:読書会in東京でわかった20代で築くべき3つの無形資産とは?
生産性資産
生産性資産は”稼ぐ力”のことです。生産性資産は、スキルと知識・仲間・評判とさらに3つの要素に分かれています。
活力資産
生産性資産が仕事面で人生を豊かにする資産であったのに対し、活力資産は仕事以外の面で人生を豊かにする資産です。そして、活力資産もさらに、健康・バランスの取れた生活・自己再生の友人関係と3つの要素に分かれます。
変身資産
変身資産とは、自分を変える力です。長寿化したことで、もっとも重要性が高まっている資産と言えます。なぜなら、生産性資産や活力資産の土台となるからです。そして、変身資産も、自分についての知識・多様性に富んだネットワーク・新しい体験に開かれた姿勢とさらに細かく分かれています。
なので、この3つの資産に意識的に時間やお金、労力を使うようにするといいです。
がんばっていると、目先の仕事をこなし、残業をして睡眠を削って不健康になりがちですが、それはPL重視の生活です。自分の行動がPLに効いているのか、BSに効いているのかを理解しながら、行動を選択してください。利益(お金、時間、労力)を資産に再投資し続ければ、ある地点からレバレッジが効いてきます。
前章でAmazonやソフトバンクの例を出しましたが、個人でも資産への再投資を繰り返している人はいます。代表例はウォーレン・バフェットです。投資の神様で、あまりにも有名な人です。
ウォーレン・バフェットは世界有数の資産家で資産は7兆円あります。そして、この資産の99%以上は50歳を超えてから築いています。これはAmazonやソフトバンクと同じく、利益の再投資(BS重視の判断)により、レバレッジが効いているからです。
ぜひ、皆さんもファイナンス思考を身につけ、無形資産への投資を繰り返してください。
以上、読書会でわかったファイナンス思考でした。