
どうすれば伝わるプレゼンになるのか?
ロジックを使った話の組み立てと4つの話し方のポイントを押さえていれば、伝わるプレゼンになります。よくある間違いとともに伝わるプレゼンの方法を紹介します。
1分で話せ
初版:2018年03月20日
著者:伊藤 羊一
目次
なぜ、あなたの話は伝わらないのか?
話が伝わらなくなる理由は、3つの「余計」な話をしているからです。その3つとは、
- がんばった「プロセス」を話す
- 気を遣いすぎる
- 自分の意見とは違うことを言う
のことです。この3つを話すことで、一気に話の要点がわからなくなり、伝わらない話(プレゼン)になります。それぞれどういう意味か解説していきます。
がんばった「プロセス」を話す
× 私は今年と昨年の資料を検討したのですが、それだけでは足りないと思い、10年間分の資料を前任の山田さんからもらって調査した結果、全体としてはA案を押していくべきではないかと思いました。
○ A案を押していくべきだと考えます。
- 自分がどういう思考プロセスを経て、いまの結論に至ったのか?
- 自分がどういう作業プロセスを経て、このプレゼンをしているのか?
など、がんばったプロセス(過程)を話す人が多くいます。
しかし、これは「余計」な話です。なぜなら、プロセスは要点ではないからです。
聞いてる側は、”で?何が言いたいの?”となります。そして、プレゼン後には”結論から入って欲しかった”というフィードバックを受けることになるでしょう。
ただ、こうしたフィードバックを伝えてくれる人は、まだいいほうです。大抵の場合、話に振り回されて、何が結論なのかわからないまま終わる人が大半となります。
がんばったプロセスは話の構成から削るべきです。
気を遣いすぎる
× そうですね。Aさんのプランもよかったですね。資料もわかりやすく、説明も丁寧でしたし。でも、Bさんのプランはよくてですね…。
○ Bさんのプランでいきたいと思います。Aさんのこの部分はよかったけど、Bさんはこの部分が優れていました。
- 正確な表現にこだわる
- 違う意見の人に気を遣う
これも「余計」な話です。こうした話し方をすると、言い切れば5秒で済む話が、10倍にも20倍にも膨らんでしまいます。
“だから、投資を考えるべきです!”
が
“だから、投資を考えるべきです!いや、わかりますよ。中には投資がその人にとってのベストな選択肢でないというケースもあるということは。その人は、それでベストな選択肢を選べばいいと思います。ただ、多くの人にとって投資はベストとは言い切れなくても、限りなくベストに近いんじゃないかという話です”
という話し方になってしまうのです。笑い話のようですが、こういう話し方の人はいます。
プレゼンは何かの意見を伝える場です。ポジションを表明する場です。
反対意見があることも、表現が厳密には正確でないことも、聞き手は承知の上で聞いてます。話を膨張させるのはやめて、明確に自分の意見を言い切るべきです。
自分の意見とは違うことを言う
× 私はA案を押していますが、実はA案にはこんな欠点もあって、その分はB案のほうが優れています。その点、A案は心配もあるのですが…、でもそれを覆せる強みもあると思うんです。
○ 私はA案に賛成です。
「気を遣いすぎる」でも書きましたが、プレゼンは自分の意見を表明するものです。
それに対して、聞き手が賛成するか反対するかは、聞き手の問題です。なので、まずは自分の意見を明確に表明しましょう。どんな意見を持っているのか?その根拠はなにか?などを明確に端的に伝えるのです。
それをせずに、聞き手の反応を気にして、自分の意見とは違うことも話に織り込んでしまうと、何を言ってるのか意味不明状態になってしまいます。
伝わる話の構成とは?
上記の図のようなロジックを構成して、話を組み立ててください。
プレゼンの準備段階でロジックが不明確だと、本番でも意味不明状態になります。事前に必ず、ロジックを明確にしてください。
そのときに、代表的なロジックが上記の図です。
まず、結論を決めます。
次に、結論に対して並列な根拠を3つ並べます。
そして、それぞれの根拠を裏付ける実例を2つずつ入れるようにします。
慣れてくれば、根拠を2つに減らしたり、根拠にさらなる根拠をつけてみたり、応用することが可能です。
しかし、最初は上記のロジックを使って、型にはめていくことをオススメします。なぜなら、事前にロジックを明確にしないまま、プレゼン資料を作っている人が多いからです。
本書でも書かれていましたが、プレゼンは事前に考えたロジックを聞き手に移植していく作業です。そのため、簡単なロジックでも使いこなせるようになれば、それだけで人より伝わるプレゼンになります。
つまりプレゼンというのは、自分が伝えたいことを「伝えていく」行為ではなく、
「相手の頭の中に、自分が伝えたいことの骨組みや中身を、『移植していく』作業」
なのです。ピラミッドそのものは見せなくても、
「ああ、結論はこうなのだな」
「そしてそこに根拠が3点あって、それぞれこういうことなのだな」と自分の頭の中にその骨組みをつくり、それを伝えていけばいいのです。
伝わる話し方とは?
プレゼンはコンテンツだけでなく、伝え方も重要です。その伝え方には4つのコツがあります。
- 視線
- 手振り
- 声
- 間合い
この4つです。それぞれ、どうすればいいのか解説します。
視線
しっかりと聞き手を見て話すようにします。視線も意識しないと、天井を見てしまったり、手元を見てしまったりします。そうすると、聞き手は違和感を感じます。
また、視線は1箇所に5秒以上は固定するようにしましょう。そうしないと、キョロキョロしている印象を与えてしまいます。
手振り
デフォルトにする手の位置を決め、動きをつけます。
手の位置が決まってないと、無意識にポケットに手を入れてしまったり、腰に手を当ててしまったりして、だらしない印象となります。なので、ヘソの前で手を組んで、それがデフォルトになるように意識づけます。その上で、話の内容に合わせた手振りを加えましょう。
上手な人のプレゼンを見ると、舞台を横断して動きをつけてます。ただ、慣れない人がやると、とても不自然な動きになります。なぜなら、普段よりもゆっくり大きく歩かないと、様にならないからです。舞台を横断するような動きをしたい場合は、必ず事前に練習しましょう。
声
大抵のプレゼンは、声が小さすぎます。そして、抑揚もなく退屈です。会場の1番奥に座っている人と「対話」するように話すと、自然と声も大きくなり、抑揚もつきます。
聴衆が50名以下のセミナーやプレゼンの場合は、実際に聞き手と「対話」してしまうのも有効です。聞き手に質問をして、答えを言ってもらったり、手を上げてもらったりしましょう。そうすると、声も自然と大きくなり抑揚がつきますし、聞き手にも適度な緊張感が生まれます。
間合い
ほとんどのプレゼンは、早すぎます。1つ1つの言葉も早いですし、間合いも短すぎます。
事前に原稿を作って、話すことが決まっていると、ほとんど間合いのないプレゼンになります。しかし、そうしたプレゼンに聞き手はついてこれません。
話の区切りで、普段より3秒ほど長く、間をとるようにしましょう。
“こんなに間を空けて大丈夫?”
と心配になるかもしれません。しかし、練習を動画に収めて確認すれば、むしろ適切な間合いであると納得できるでしょう。
知ってても、実践できない人へ
本稿の「伝わる話の構成」も「伝わる話し方」も、難しい内容ではありません。目新しい理論でもテクニックでもありません。
しかし、ほとんどの人が実践できません。
プレゼンは典型的に「知ってる」と「できる」に差のある能力です。
なぜ、知ってるのに実践できないのでしょうか?
答えは簡単です。それは練習していないからです。
そうです、プレゼンにも練習が必要なのです。本書にも、このように書かれています。
ミュージシャンは、リハーサルをします。どんなにベテランであっても、練習やリハーサルをしない人はいないでしょう。舞台俳優もそうです。どれだけ演技力がある俳優であったとしても、稽古をしない人はいないはずです。そして、店舗で接客をする人も、おもてなしをまったく練習しない人はいません。
なのに、ビジネスパーソンがプレゼンする時は、練習しない人が多いのです。おかしいですよね。何度も練習し、録音し、使う言葉を変え、声のトーンを変え、間合いをとりながら、こうしたら伝わるだろうか、このように話したら、聞き手は動いてくれるだろうか。そのように悩みながら、色々試しながら練習し、それで本番を迎える、ということをやればいいのです。他のプロフェッショナルがそうするように。
考えてみれば、ぶっつけ本番でプレゼンをするなんて、とても不思議なことです。
話のプロである落語家も漫才師も政治家も、みんな練習をしています。なのに素人であるビジネスパーソンは練習をしません。それでは上手くいかなくても当然です。
島田紳助さんは漫才を刀に例えていました。
名刀と言われるような刀でも鍛え続けないと、すぐに錆びついて使い物にならなくなります。漫才も同様です。どんなにハイレベルな漫才ができるようになったとしても、磨き続けないとすぐに平凡なレベルに落ちてしまうそうです。
「話」はこのような能力なのです。
知ってても実践できない人は、ぜひ練習を重ねてください。スマートフォンで自身のプレゼンを録画すれば、客観的に振り返えることができます。ぜひ、試してみてください。