
Googleの研究によると、生産性の高いチームには5つの特徴があります。
その中で、もっとも大切なのは心理的安全性です。なぜなら、メンバーのモチベーションと自己表現を高めるからです。読書会でわかった世界最高のチームと、そのつくり方を紹介します。
世界最高のチーム
初版:2018年08月20日
著者:ピョートル・フェリクス・グジバチ
目次
Google流「世界最高のチーム」とは?
これがGoolgeが考える最高のチームの特徴です。
Googleにはアリストテレスというプロジェクトがあります。世界中にあるGoolge社内のチームを調べ、生産性の高いチームは何が違うのか?を解明したプロジェクトです。
あるチームでは全く力を発揮できなかったメンバーが、別のチームに移った途端に活躍することってありますよね?優秀な人材が世界中から集まってくるGoogleでも、そうしたことは日常的に起きています。
もし、全員が能力を存分に発揮し、生産性を高められれば…。マネージャーなら、誰しもが考えることでしょう。
そこで立ち上がったプロジェクトがアリストテレスです。そして、アリストテレスは世界最高のチームとして、
- チームの「心理的安全性」(Psychological Safety)が高いこと
- チームに対する「信頼性」(Dependability)が高いこと
- チームの「構造」(Structure)が「明瞭」(Clarity)であること
- チームの仕事に「意味」(Meaning)を見出していること
- チームの仕事が社会に対して「影響」(mpact)をもたらすと考えていること
この5つの条件を結論づけています。次章以降で、その意味と世界最高のチームのつくり方を紹介していきます。
なぜ、心理的安全性が大切なのか?
- 最高のチームの条件の中でも「心理的安全性」が特に重要です。なぜなら、心理的安全性は、その他の条件の土台となっているからです。
この5つの中で一番大事なのは、1の「心理的安全性」です。
心理的安全性の高いチームなら、「自己認識・自己開示・自己表現」ができる
心理的安全性とは、端的に言えば「メンバー一人ひとりが安心して、自分が自分らしくそのチームで働ける」ということ。自分らしく働くとは、「自己認識・自己開示・自己表現ができる」ということです。要は、「安心してなんでも言い合えるチーム」が心理的安全性の高いチームなのです。これが2~5の土台になっています。
そのため、チームのメンバーが心理的安全性を感じることができて、自己認識・自己開示・自己表現ができると、チームの生産性は高まります。
また、心理的安全性を確保できていると、チームには2つの大きなメリットがあります
- モチベーションを高められる
- 集合知を活用できる
この2つです。
チームには、
- モチベーションというソフト面
- スキル・能力というハード面
の両面があります。上記のメリットは、心理的安全性が、その両面を高められるということを意味しています。それでは、それぞれを解説していきます。
モチベーションを高められる
モチベーションのレベルには、「従順」から「情熱」まで、6段階あるといいます。
そして、心理的安全性が確保されていることで、高いレベルのモチベーションを維持することができるようになります。
「企業が繁栄するかどうかは、あらゆる階層の社員の主体性、想像力、情熱を引き出せるかどうかにかかっている。そしてそのためには、全員が自分の仕事、勤務先やその使命と精神面で強くつながっていることが欠かせない」
この本でも、チームメンバーの能力をレベル4、5、6へと高めていくことを目指しています。つまり、チームの「心理的安全性」を高めることで、チームメンバーの「主体性、創造性、情熱」を引き出していこうというわけです。心理的安全性の低いチームは、メンバーの能力をレベル1か2、せいぜい3までしか引き出せず、早晩、衰退することでしょう。
もちろん、メンバーのモチベーションは高い方が生産性は高まります。これが、心理的安全性によるメリットの1つ目です。
集合知を活用できる
一人でできることには限界があります。それは、どんなに能力の高い人でも同じです。
その限界を越えるためには、大勢からの協力が欠かせません。「経営の教科書」の中でも、
- 経営とは、経営とは、人を通じて物事を達成する技
と書かれています。これはマンパワーの側面だけを意味しているのではありません。知識やアイデアの面でも、同様です。『「みんなの意見」は案外正しい』でも、詳細な研究結果とともに「集合知」の大切さが述べられています。
そして、集合知を活用するためには、メンバーの心理的安全性が欠かせません。なぜなら、反論・異論を許容されない職場で、メンバーから集合知を吸い上げることはできないからです。
チーム及びマネジャーが必要な理由は、繰り返しになりますが、チームのダイバーシティ(多様性)による「集合知」なしに、大きな成果を上げることはできないからです。
ここまで述べてきたマネジャーの「やるべきこと」も、当然ながら、いかにチームの集合知をつくっていくかという方法論に直結しています。
さて、ダイバーシティで重要なのは、よく言われがちな男女の割合がどうとか外国人の割合がこうといった人材の多様性ではなくて、「思考の多様性」だと僕は思っています。
大きな成果を上げるためにまず必要なのは、言うまでもなく、新しいアイデアです。いくら資金があっても、新しいアイデアがなければ、文字どおり宝の持ち腐れでしょう。
そのため、心理的安全性が高いと、思考の多様性が確保され、集合知を活用できるようになります。これが2つ目のメリットです。
生産性を上げるマネジメントとは?
- よいチームをつくるには、よいマネジメントが欠かせません。なぜなら、マネージャーの言動がチームのパフォーマンスにもっとも影響を与えているからです。
マネジャーの言動がチームのパフォーマンスにもっとも関係している
当たり前の話ですが、グーグルにだって成果を上げているチームもあれば、上げていないチームもあります。
メンバーは同じように優秀なのに、なぜそういう差が出るのか。たとえば、同じ人がこっちのチームでは成果を上げていたのに、あっちのチームに入ったとたん成果を上げなくなったということも、ごく普通に起こっている。それはどうしてなのか。マネジャーには大事な役割があると考えている人事の仮説は、その理由はチームをまとめているマネジャーにあるというもの。
調査の初期段階で、人事の仮説どおり、メンバーのパフォーマンスにもっとも関係しているのはマネジャーの言動だということがわかりました。
では、どのようなマネジメントをすれば、最高のチームをつくれるのでしょうか?
本書では、4つのマネジメントが紹介されています。
- マネージャーの8か条
- 腰が低い
- 価値観を深める雑談
- ギャング化しない
それぞれを解説していきます。
マネージャーの8か条
よいマネージャーには8つの条件があります。これはプロジェクト・アリストテレスよりも歴の深いオキシジェンという調査・分析の結果です。
- よいコーチである
- チームを勢いづけて、マイクロマネジメント(チームのメンバーに対する過度な監督・干渉)はしない
- チームのメンバーが健康に過ごすこと、成果を上げることに強い関心を持っている
- 生産的で成果主義である
- チーム内のよき聞き手であり、メンバーと活発にコミュニケーションしている
- チームのメンバーのキャリア形成を手助けしている
- チームのためのはっきりとしたビジョンや戦略を持っている
- チームのメンバーにアドバイスできる専門的技術・知識を持っている
この中でも、マネージャーとしてもっとも大切なのは「よいコーチである」ことです。なぜなら、コーチングはマネジメントの土台となるからです。この土台がなければ、2~8を実践することはできません。
よいコーチでなければ、メンバーの健康やキャリア形成に関心を向けていたとしても、”大きなお世話”になってしまうでしょう。しかし、よいコーチングができていれば、メンバーは上司から関心を向けられていることを嬉しく思います。
なので、1~8をすべて実践しようとするのではなく、まずは「よいコーチであること」から始めるのがいいようです。
腰が低い
これもマネージャーとして大切です。なぜなら、「横柄な態度」はマネージャーがやってしまいがちな、失敗だからです。
マネージャーが横柄な態度をとり、メンバーに対して高圧的な接し方をすると、心理的安全性が損なわれます。心理的な安全性が損なわれた組織は、長く繁栄することができません。
相手を見下すリーダーの成功は長続きしない
僕がこれまで見てきた優秀なマネジャーの共通点は「腰が低い」ということです。経営者にもそれは共通しているので、組織の優秀なリーダーたちの特徴と言えるでしょう。しかも洋の東西を問わず、世界共通というのが僕の実感です。
一方、いかにも偉そうにしていて、相手を見下しているような不遜なリーダーは、一時的には成功しても決して長続きしません。あっという間に落ち目になったマネジャーや経営者をたくさん見てきました。
腰の低さ、つまり謙虚さはまさにリーダーシップの土台なのです。
だれに対しても優しくて、腰が低くて、謙遜しているようなリーダーを周りにいる人たちは放っておけません。自然に手伝いたい、助けたいという気持ちになって、だから、そういう人がトップにいるチームや会社は成果も上がるわけです。
メンバーとマネージャーは立場が違います。なので、初期状態でメンバーはマネージャーの意見を聞いて、尊重してくれます。
しかし、そこに安住していると、知らず知らずのうちに横柄な態度に発展しがちです。「腰の低さ」を意識して、謙虚さを身につけましょう。
価値観を深める雑談
心理的安全性を高めるためには、「雑談」も重要です。
なぜなら、雑談を通じて、
- 自分とはどういう人間かを認識したり
- 仕事仲間への理解を深めたり
- 自分の意見を表明できたり
するからです。これは、つまり雑談を通じて、
- 自己認識
- 自己開示
- 自己表現
ができるということです。
著者は自己認識・自己開示・自己表現につながる雑談として、
- あなたは仕事を通じて何を得たいですか?
- それはなぜ必要ですか?
- 何をもっていい仕事をしたと言えますか?
- なぜ、いまの仕事を選んだんですか?
- 去年と今年の仕事はどういうふうにつながっていますか?
- あなたの一番の強みはなんですか?
- あなたは、いまどんなサポートが必要ですか?
こうした7つの質問をするといいます。
- 1と2は価値観・信念
- 3と4は基準・モチベーション
- 5は成長
- 6は強み
- 7は必要なサポート
について聞いています。こうした価値観を深めたり、自分の成長や強みに気づくような雑談をすることで、自己認識・自己開示・自己表現ができるようになります。ぜひ、取り入れてみてください。
ギャング化しない
会社のためではなく、自分のためにチームを動かし始めるマネージャーがいます。そうしたマネージャーは倫理観が薄く、会社に損害を与えたり、長期的には活躍できなかったりします。
著者は、こうしたマネージャーをギャングと呼んでいます。このギャングには、
- 自慢が多い
- 他のチームの文句が多い
- 徒党を組みたがる
という特徴があります。
ただ、注意しなければいけないのは、チームを会社のために動かさず、自分のために動かそうとするファースト・ペンギンもいるということです。僕は、そうしたマネジャーが率いるチームを「ギャング」と呼んでいます。
ギャングマネジャーの特徴は、とにかく自慢と文句が多いこと。たとえば、「うちのチームってすごいよな。隣のチームを見てみろよ、あいつらぜんぜん働かないよな」などと言いつのります。また、ある意味で面倒見がよくて、「みんな、飲みに行こうぜ!」などと徒党を組みたがります。
わたしも、ギャング化したマネージャーと仕事をしたことがあります。ギャング化したマネージャーは面倒見がよいという魅力的な面もあるため、みんなから嫌われまくっているわけではありません。
しかし、長期的には周囲も”自分が第一優先”なマネージャーだと気づき始めます。そのため、長期的には人望を失い、協力を得られなくなります。
メンバーはマネージャーの意見を鵜呑みにすることも多々あります。そうした環境でギャング化する人は必ず出ます。そのことをよく理解して、ギャング化しないように注意してください。
以上、読書会でわかったGoogle流「世界最高のチーム」でした。
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