
失敗しない起業の方法とは?
事業にはキャッシュエンジンとスケール化事業と2種類があります。この2種類の特徴を理解し、取り組む順番を間違えければ、起業で失敗することはありません。
「起業3年目までの教科書」でわかった失敗しない起業の方法を紹介します。
起業3年目までの教科書
初版:2018年06月15日
著者:大竹慎太郎
事業には2種類ある
事業には2種類のタイプが存在します。その2つとは、
- キャッシュエンジン事業
- スケール化事業
の2つであり、概要は下記の図の通りです。
起業して失敗しないためには、
- 2種類の事業を理解していること
- 2種類の事業に取り組む順番を間違えないこと
が、とても重要なポイントになります。起業して失敗する人の多くは、この2種類の事業を理解しておらず、取り組むべき順番も間違ってしまうので、事業が立ち行かなくなるのです。そこで、まずはキャッシュエンジン事業とスケール化事業の特徴を解説していきます。
キャッシュエンジン事業
キャッシュエンジン事業の代表例としては、
- WEB制作
- 営業代行
などがあります。そして、キャッシュエンジン事業の特徴は、図に記載されている通り、
- 難易度は低い
- 確実にキャッシュを稼げる
ということがあります。しかしながら、
- 事業としては地味
- 労働集約型
- 当たっても大成功はない
ために、起業を志す人からは敬遠されがちな事業です。
つまり、キャッシュエンジン起業とは、キャッシュ(日銭)を確実に稼ぎ、事業を延々と継続するための原資となるエンジン(事業継続の原動力)をあらかじめ持って起業する経営手法のことである。
キャッシュエンジンとなる事業は、多くの場合地味だ。目立たないがゆえに見逃されている。だが、堅実で重要な起業法の一つである。
しかしながら、起業を志す人にとってキャッシュエンジン事業は、とても重要な事業です。なぜなら、まずはキャッシュエンジン事業を軌道に乗せることが起業で失敗しない確実な方法だからです。
多くの起業家は途中で資金が尽きてしまい、立ち行かなくなります。しかし、確実なキャッシュエンジン事業をもっている会社は、資金が尽きることがありません。大成功はしないですが、確実に事業を存続していくことができます。この「事業の継続」こそ、「起業3年目までの教科書」に書かれている起業の最重要ポイントです。
スケール化事業
スケール化事業の代表例は、
- Airbnb
- Uber
- メルカリ
などがあります。そして、多くの人が「アプリ開発」に魅力を感じるのもスケール化事業に該当するからです。このスケール化事業の特徴は、
- 華やかな外見があり、世間から注目を集める
- 当たれば大成功(スケール化)する
ということがあります。しかしながら、
- 難易度は非常に高い
- 当たる確率は、ほぼゼロ
- 当たらなければ、1円も入ってこない
という難点があります。
私はこういった、開発までにコストがかかるが、一発当たると大きな利益を生み出す事業を「キャッシュエンジン型事業」と比して「スケール型事業」と呼んでいる。スケールするとは大きくなるという意味なので、大きく当たるという意味でそう呼んでいるものである。
スケール型の事業のメリットは、開発が終わってからは特に大きな機能などの新規開発やアップデートを行わなければ、あまり人員が必要なくなる点だ。たとえば3人でアプリを開発したとして、それを完成後に運用するのはたとえば3人少々で十分足りたりする。もしそのアプリがヒットすれば、自然とその利益はうなぎ登りになる。しかもそのグラフの傾きは、当たればいくらでも大きくなる。限界すらないと感じられるほどだ。
すなわち、スケール型の事業とは、主に当たれば当たるほど利益率が増大していくビジネスモデルのことを指す。
そのため、このスケール化事業に魅力を感じて起業を志す人たちが多いです。自分が思いついたアイデアを試し、世の中にインパクトを与えたいと考えるわけです。
しかしながら、そうしたアイデアが当たる可能性はゼロに等しいです。仮に、いいアイデアだったとしてもサービスが立ち上がり、お金を生み出すまでに時間がかかります。事業内容によっては、5年・10年とかかるものもあるでしょう。そのため、途中で資金が尽きて、立ち行かなくなってしまうのです。これが起業がうまくいかない要因です。
失敗しない起業の方法とは?
- 外部からの資金調達を可能にするためのビビッドな事業計画案
- 銀行や投資ファンドへの高いプレゼンテーション能力
- そもそも起業のための膨大な費用
- ましてや、事業を当てるための豊富な才能も才覚
これらすべてが必要でなく、起業で失敗しない方法があります。それは、「キャッシュエンジン事業から始める」ということです。
キャッシュエンジン事業は、すでに述べたとおり、労働集約型で時間・労働の対価としてお金が得られるような事業です。そのため、事業を開始した直後から、キャッシュを得られるという利点があります。キャッシュを得られば、事業が途絶えることはありません。
そして、会社を大成功に導きたければ、キャッシュエンジン事業が軌道に乗ったあとにスケール化事業に取り組めばいいのです。
キャッシュエンジンという命綱がある状態でスケール化事業に取り組めば、仮に失敗しても致命傷になることはありません。何度でも失敗を繰り返しながら、大当たりするスケール化事業にたどり着くことも可能です。
そのため、失敗しない起業方法は
- キャッシュエンジン事業からスタートする
- キャッシュエンジン事業が軌道に乗ったら、スケール化事業に取り組む
- 致命傷にならない失敗を繰り返しながら、当たるスケール化事業を模索する
というものです。こうした事業の多角化について、稲盛和夫氏は、このように語っています。
事業をするということは、鉱山を掘り当てるようなものです。(略)努力すればいくらでも鉱脈がある業種もあれば、掘っても砂しか出てこない業種もあるということ、すなわち、運、不運になるわけです。ではどうすればよいのでしょうか。(略)
とはいえ、多角化・多面的な展開というのは、「言うは易し、行うは難し」です。(略)競争相手の会社は100%それだけに集中してやっていますが、こちらは、二つに力を割くわけですから、力が二分の一になってしまいます。これでは最初から勝負も見えています。二つの事業を展開するときには、競争相手の倍、すなわち100%の力を注ぎこまなければ対抗できません。(略)それを承知なら手を出してもいいのです
が、それだけの根性がないのなら手を出してはいけません。そのために、本業までダメにしてしまうこともあるからです。
本当は、本業でせめて一割ぐらいの利益が出るようにしておかなければいけません。たとえば、もし5億円の売上があるとしたら、5000万円ぐらいの利益が出て、技術者も含めて15~20人ぐらいの従業員が食べていけるようになっていなければいけません。
そのうえで、「すまないが、いまから俺は光触媒をやるから、会社にあるお金のうち、2000万円を使わせてくれ。あなたたちは本業を守ってくれ」と言って、あなたが別会社で展開していくのです。
よしんば失敗しても、持って出た2000万円だけをゼロにして、逃げ帰ってくることができます。それは、自分の城の本丸がしっかりしているからです。ところが、その本丸が根無し草では、打って出たはいいけれども、向こうで負けたら帰ってくる場所がありません。帰ってみたら自分の城が敵に獲られて炎上していたというのでは、意味がありません(稲森和夫著『従業員をやる気にさせる7つのカギ』(日本経済新聞社)より引用)
稲盛和夫氏が仰っている「鉱山」とはニーズ(市場)のことです。そして、15~20人ぐらいの従業員が食べていける事業とは、キャッシュエンジン事業のことです。
そのため、稲盛和夫氏も
- キャッシュエンジン事業で15~20人が食べていけるようにする
- キャッシュエンジン事業で稼いだお金で、スケール化事業で次の市場を狙う
- こうしたリスクの取り方ならば、失敗しても致命傷にはならない
と述べているのです。
では、次に具体的な鉱山(ニーズ)の見つけ方とキャッシュエンジン事業のスタート方法について、解説していきます。
鉱山(ニーズ)を見つける
いまではスケール化事業を展開している大企業も、最初はキャッシュエンジン事業からスタートしています。本書では、以下のような例が紹介されています。
- サイバーエージェントの藤田さんは、起業する前に、「広告代理業はコストが少なく、営業力さえあれば安定的に売上を伸ばせる、莫大な市場が広がっている事業だ」と気づいた
- オン・ザ・エッヂの堀江さんは、起業する前に、「ホームページの制作請負業務は、営業力さえあれば安定的に売上を伸ばせる、莫大な市場が広がっている事業だ」と気づいた
- スタートトゥデイの前澤さんは、ZOZOTOWNを立ち上げる前に、「目利きを持って何かを仕入れ、オンライン上で販売すれば、大きく継続的な売上が得られる」ことに気づいた
- ファーストリテイリングの柳井さんは、まだユニクロを立ち上げる前に「ベーシックなカジュアルウェアが、季節や流行に関係なく売れ続けている」という小さな変化に気づいた
- 源カンパニーの河原さんは、まだ一風堂を立ち上げる前に、「長く繁盛しているラーメン店が存在していることと同時に、女の子が気軽に入れるラーメン店がない」という小さな変化、に気がついた
事業がうまくいくか否かは、稲盛和夫氏の言うとおり「鉱山(ニーズ)を掘り当てられるか否か」にかかっています。そして、その鉱山(ニーズ)は、以下のような条件を揃えている必要があります。
- ニーズが大きく、長く継続する
- 自身のマーケティングや営業努力で、売上・利益を確実に伸ばしていくことができる。すなわち、当たるかどうかに賭ける要素が少ない
- 初期投資が少なくてすむ
こうした条件を揃えた鉱山(ニーズ)を掘り当てるには、”実体験”が最重要です。
机の上で論理的に”こうしたニーズがあるはずだ!”と考えても、的を得た事業にはなりません。なぜなら、ニーズは人の気持ちの中にあるものだからです。そのため、実体験として肌感覚のあるニーズを掴むことが大事です。
そして、肌感覚のあるニーズを掴むには、人とあったり、仕事で関わったりと自分が体験するのが1番の近道です。
すなわちキャッシュエンジンの「タネ」とは、「あれ、何かこの数字変だな。こればっかりに注力していって、さらに拡大していったら、安定的にいつまでも収入を伸ばしていけるんじゃないか?と思えるようなもの」である。
第一に大切なのはこればっかりに注力したら、の部分で、注力してやった結果、すぐに売上が途切れるような小さな井戸市場ではまずだめだということ。
第二に大事なのはさらに拡大していったら、の部分で第一の理由と似ているが、拡大し続けても、売上が途切れないような大きな市場が広がっている分野である必要があるということだ。もう少し詳しくいうと、「マーケティングなどで押し売りする必要もなく、地味ではあるが、勝手に売れ続けているものを探す」と考えてもいいだろう。
テスト・マーケティングを行う
肌感覚のあるニーズを見つけることができたら、鉱山を掘り当てるまで、あと少しです。肌感覚があるということは、絶対的な確信をもって事業に取り組むことも可能です。
しかし、ここで注意が必要です。それは「最初から大きくリスクを取らない」ということです。
- いきなり会社を辞めて、起業したり
- 巨額の仕入れをしたり
- オフィスを構えたり
- 人を雇ったり
そうしたリスクを取ってはいけません。
ニーズを見つけて、1番最初にすべきことは「テスト・マーケティング」です。つまり、小さく事業を始めるということです。
たとえば、副業で1つ案件を請け負ってみるというのもいいでしょう。そうやって、”片手間”程度の小さな労力でも仕事を得られて売上をあげられるものであれば、そのニーズは本物です。
テスト・マーケティングで自分が感じたニーズが本物かどうかを試してみてください。本物だとわかったら、あとはリスクを取って事業を展開していけばいいのです。そうすれば、売上はどんどん上がっていきます。
ここまでの話をまとめると、結局「あれっ、これキャッシュエンジンのタネっぽいな……」というものに出合ったからといって、どの経営者もいきなり「大きく起業」も「大きく展開」もしていないということだ。
いまの会社でその事業を試してみるか、あるいは思い切ってアルバイトでその事業に似たことをやっている会社で働いて、自分の手で実際にその感触を試してみるか、偉大な先人たちは、ずっとそんな努力を積み重ねてきているのである。
ここで重要なことは、「思いつきですく大きく事業を展開するのではなく、自分の仕事の延長線上で、あるいはアルバイトをしてでも、その仮説が正しいかどうかを実際に確かめること」だ。
そうやって実際に売上を上げて、同時に経営に必要な様々なノウハウを身に付け、「これは間違いなくキャッシュエンジンたりえる事業である」との核心に体感として至った時に、晴れて大展開に移ればいいのである。
以上、「起業3年目までの教科書」でわかった失敗しない起業の方法でした。
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