
“センスとは不便を感じる回数である”
今回は「デザイン思考の先をいくもの」がMVP賞でした!本書では「正しい」デザイン思考が紹介されています。
デザイン思考とは、ロジカル思考と対比される考え方です。多くの情報収集をして課題や改善策を考えるのではなく、先に課題を仮定し、プロトタイプの作成と実践を繰り返す思考法です。
開催報告:20代読書会in東京
日時:02月23日(土)09:30-12:00
参加者:24名(男性:15名、女性:9名 初参加:8名、リピーター:16名)
MVP賞
デザイン思考の先を行くもの

「ハーバードの大学院でデザインを学んでいて気づいたこと。それは日本人だけが突出して、“デザイン”という言葉の本来の意味を誤解していること」
電通のコピーライターとして活躍してきた一方、ハーバード大学デザイン大学院にて都市デザイン学修士を修めた建築家でもあるという異色の経歴を持つ著者の視点から、 日本人が抱えてきた“デザイン”という言葉への誤解を紐解くとともに、デザイン思考の先を行く新たな手法の秘訣を紹介します。
“デザイン思考”が日本に輸入されて以来、「ゼロイチ」や「イノベーション」という文脈で、数え切れないほど多くの書籍が出版され、現在でもイベントやワークショップが至る所で開催されています。しかし“デザイン思考”とは既存のプロダクトを「改善」していく手法としては最高のフレームワークである一方、必ずしも、革新的なビジネスの「はじまり」に寄与するとは限りません。
これからの事業創造に求められることは、「未来はどうなるか」という受け身の予測的態度ではなく「(あなたは)未来をどうしたいか」という能動的な個人の欲求であると著者は言う。
ハーバード・デザインスクールの授業で著者は、創造力に必要な二つの力の存在を学んできました。ひとつはあらゆるアイデアの源泉であり、個性と専門性が求められる【個人の見立てる力】。そしてもうひとつは、自ら創造した未来から逆に現在のあるべき姿を描く【未来からの逆算力(バックキャスティング)】。
このふたつを原動力として生み出された5つのビジネスやデザインの実例を元に、誰もが革新的な発想を生み出せる4種類のメソッドをご紹介します。
紹介された本
小さいおうち

今はない家と人々の、忘れがたい日々の物語。映画化決定
昭和初期東京、戦争の影濃くなる中での家庭の風景や人々の心情。ある女中回想録に秘めた思いと意外な結末が胸を衝く、直木賞受賞作。
サブスクリプション

ネットフリックス、スポティファイ、セールスフォースなどの企業は、サブスクリプション・モデルの氷山の一角にすぎない。本当の変革、そして本当のチャンスは幕を開けたばかりである――。
ビジネスの世界は、いま2つの大きな変化に直面している。
1つは企業視点で、従来のプロダクト販売モデルでは成長し続けるのが難しくなっていること。
もう1つは消費者視点で、消費者の関心が「所有」から「利用」へと移行していることだ。
これらの問題に企業はどう対処すべきか?
その解決策として注目を集めているのが、サブスクリプション型のビジネスモデルである。
サブスクリプションは古くから新聞の定期購読などで知られており、一定の利用期間に応じて料金を支払う方式。
このモデルがいま注目されている背景には、顧客との取引がデジタルデータで生成されるようになったことがある。
企業はサブスクライバーIDをきめ細かく管理し対応することにより、顧客との長期的なリレーションシップを構築することができる。
実際、サブスクリプション企業はS&P500社の9倍もの速さで成長をとげている。
その理由は、彼らは顧客一人ひとりが異なる顔を持っているということを認識し、その認識の上にビジネスを構築しているからだ。
これは、誰が顧客かを知らずにモノを売っているプロダクト販売モデルとは大きく異なる。
では、これらのサブスクリプション企業は、どのようにして顧客との関係性を築いたのか。
第1部では、小売り、メディア、運輸交通、新聞・出版、テクノロジー、製造など各業界の世界の最先端事例を詳しく紹介する。
そして第2部では、従来のプロダクト販売モデルの企業がサブスクリプション・モデルに移行するために組織をどう変えればよいのかを、イノベーション、マーケティング、営業、ファイナンス、ITといった機能別に解説する。
巻末には、サブスクリプション企業の収益成長率やビジネスモデル別・業界別・地域別に見たチャーン率(解約率)の比較、従量課金が収益に及ぼす影響などを示したサブスクリプション・エコノミー・インデックスを収載。
サラバ

累計百万部突破!第152回直木賞受賞作
僕はこの世界に左足から登場した――。
圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。
そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
小売再生

音声認識により買い物を済ませてくれるAI(人工知能)スピーカー「アマゾン・エコー」をはじめ、デジタル技術を駆使した破壊的なイノベーションは小売業の常識をはるかに超えるものだ。しかもネット通販はデジタルシフトの「始まりの終わり」にすぎない。世界中の店にバーチャルに行ける仮想現実(VR)、自分がいる環境が本物そっくりの店に変わる拡張現実(AR)など、小売りに関連したデジタル技術の開発は急ピッチだ。「もう小売店は店をたたむしかない」(投資家、マーク・アンドリーセン氏の発言)のか。
小売業の行く末を決めるのはいかなる時代でも消費者だ。小売業の「未来予測者」である著者は、デジタルシフトの時代だからこそ、逆に「生の購買体験の場」、実店舗こそが消費者に支持され、小売再生の基盤、競争優位の源泉になりうると指摘する。例えば、アップルストアで喜々としてアップル製品を体験する若者たち。そこは単なる販売拠点ではなく、若者たちがアップルブランドを実際に体験し、認知する場と考えた方がよい。五感でブランドを体感・体験できるのは実店舗以外にはない。店舗は生の体験を通じてブランドを伝え認知させる媒体になり、最終的に商品購入につなげる空間になる。商品販売の場を超えた「実店舗のメディア化」である。アマゾンですら、実店舗を展開しつつあることに着眼すべきだろう。
現に米国では、本格的なリスニングルームで試聴できるスピーカー販売店、クライミングができるアウトドア用品店、調理もできる調理器具店など、身体を使って商品を体験できるショップが急成長しつつある。日本の小売業、ブランドメーカーの再生モデルとなる事例があふれている。特に興味深い点は、業界で成功を収めた故に、抜本的な再生が難しい大手小売業の行方である。かのウォルマートですら転換に苦闘している。いかにイノベーション力を回復し、再生できるか。鍵は創業者メンタリティーの復活という。日本の小売業で「顧客体験」重視にカジを切った企業はどれだけあるか。小売業の将来に危機感を持つ経営者、ビジネスパーソンにとって必読の書である。
以上、02月23日(土)20代読書会in東京の開催報告でした。